【ヒロアカ】助けて、ヒーロー！【轟焦凍】 (ページ2)

今日:4 hit、昨日:9 hit、合計:13,727 hit

1 ページ2

.
　それは、かの偉大なるヒーロー育成学校、雄英高校の門の前でのことだった。

「ここで働かせてください！」
「ダメだ！」
「なんでもします！お願いします！」
「ダメだと言っているぞ、少女よ」
「お給料なんていりませんから、どうか！」

　屈強な体をしたまさしくヒーローと呼ぶべき男の前に、栗色の風呂敷を丸め負ぶった少女がこれでもかと頭を垂れている。見た目からして大きく差のあるふたりを見ようものなら「あら、弱いものいじめ？ヒーローに助けを呼ばなきゃ」と誤解されかねない図式であり、男は頭を垂れる彼女を誰かが見ていないか首を右往左往させ懸念を繰り返した。当然だ！こんな薄汚れた場面を他人に見られようものなら明日から私はヒーローではなく婦女暴行の敵として新聞の一面を飾ることとなる！
　悪役による一方的ないじめ、暴力と思うだろうがそれは違う。地に頭が着くか否かを彷徨う貧乏そうで腰が低い娘こそ、ヒーローなのだから。ヒーローらしい権威は今のところ頭と共に地に失墜しているが。
　彼女はいよいよひれ伏した。背を平にし、頭を深々と降ろした。

「お願いします！」これには男もたじろぐ。
「……なぜそこまでしてここに固執する？」
「それは……」

　彼女は言いづらそうに震えていた。男は彼女を立ち上がらせ、自身に渦巻く罪悪感から逃れた。
　しかし、なおも彼女は下を向いていた。

「言いたくないことならばいい。誰にだってそういうことはあるさ」
「いえ、言っておかなきゃいけないことですから」
「うん？」

　顔を上げた彼女はどことなく怯えていた。

「私の両親は、ヒーローだから！」

　これが彼女、AAの姿である。栗色の風呂敷を握りしめ、震えながらも男を真剣な瞳で見据えていた。