大切なあなたに紫苑を【kgm】 (ページ6)

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5 ─side加賀美ページ6

「はぁ…」

電車に揺られながら周囲にバレないようにため息を吐く。今日は世間一般としては何の変哲もない夏の終わりと秋の始まりの間のような日

なのだが、俺にとっては違う。今から、大学時代からの友人京Aに加賀美ハヤトとしてにじさんじで配信活動をしているとカミングアウトするのである。

ここまで3年ほど活動してきてバレていないので、これからもバレないかなとは思ったが、先に行ってしまおうという決断に至った。

────結論に至ったものの、

こういうのは何と切り出せば良いのか分からない。

まず最初ににじさんじを知っているか聞いてみるか。それとも単刀直入に配信してると言ってしまうか。

様々な考えが頭のなかを逡巡していたが、目的の駅に到着してしまった。

ポケットからICカードを取り出し、改札を抜ける。

きっと今日も俺が先についているから、駅を出てすぐのいつものベンチに座って待っていようと思っていたのだが、

予想に反して、Aはいつものベンチに座って待っていた。

やっぱり、好きだなぁ。

実はずっと前からAのことが好きなのだ

でも、彼女は恋ってどういう感情か分からないと常々言っているし、俺に恋愛感情は抱いていないと思っている。所謂片想いだ。

早く諦めて普通の友人にならないと、と思っているが恋というものは、なかなか諦められないもので、未だに恋をしている俺がいる。

どうしようもない感情を胸の奥に仕舞い込んで、小走りで彼女の元に駆けていく。

「待った？」

『いや、待ってないよ』

「え〜嘘だー」

『人のこと信用できないのか？』

「そんなことはない」

『じゃあ、そんなことより早く行こうよ』

「じゃあって何だよじゃあって」

Aの謎発言にツッコミを入れつつ、自然と口角が上がってしまう。

それから、しばらく話しながら歩くと目的の居酒屋に着いた。

今日はAが予約をするターンだったので店に入ってすぐに店員さんに予約していた京です、と伝えてくれた。

彼女は自覚していないし、いつも否定したいるが、少し天然である。だけど、仕事や店員さんと話すとき等はシャキッとしていて、かっこいいなと思う。これが俗に言うギャップ萌えなのだろう。