大切なあなたに紫苑を【kgm】 (ページ5)

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かわいいな…

今、不覚にも加賀美のことを可愛いと思った。恋愛経験のないこの私が。三十路の男友達のことを可愛いと感じた。これが恋の魔法とかいうやつか。

いや、実は今までも加賀美のことを可愛いと思ったことは何度かある。

でもこの感情は本当に親友に向けての感情なのだろうか？
男友達に普通可愛いと思うか？

私の頭がシュレディンガーの猫と化していたときに加賀美が口を開いた。

「A、さっきの俺の気持ちは本当。でも、Aが俺と同じ気持ちじゃないのは今の反応見ててもよくわかる。本当は、付き合いたいし、デートとか行きたいし、手とか繋ぎたい。でも、俺は残り2年しかないAの人生はAが苦しまないように生きて欲しい。だから、今の言葉は無かったことに───」

『待って』

この話を無かったことにするのはどこか違う気がする。今の言葉を無かったことにするのは、加賀美の気持ちを踏みにじるのと同じだと思うのだ。

『考えさせて

付き合いたいくらい好きなんでしょ

私はご存じの通り、誰かに恋したことが無いから、恋っていう感情が分からないの。

だから、今加賀美に向けている"好き"がどの好きなのか考えさせてほしい。

優柔不断だから時間がかかるかもしれないし、すごいわがままかもしれないけど、

お願い。その言葉を取り消さないで。』

私の心臓の音が聞こえているんじゃないか、と思うくらいの長い沈黙が走った。

私の中では5分くらい経った後にようやく加賀美が口を開いた。

「分かった。いつまでも待つよ。」

『ありがとう！！！』

私がほっと胸を撫で下ろしている間に、加賀美は自席に戻っていた。

「とりあえず、早くデュエルしようぜ」

そう言いながら冷たくなったお好み焼きを頬張る彼はやっぱり可愛く見えた。