大切なあなたに紫苑を【kgm】 (ページ4)

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「最初から本当しか話してないよ。
　

加賀美に、こんな嘘つくわけないじゃん」

言っていて私も涙が込み上げてきたが、頑張って笑った。

その瞬間、彼の目から透明な二粒の水滴が、瞬きと共に弾き出された。
それを皮切りに、とめどなく涙が彼の頬を伝った。

「…抱きしめても、いいですか」

「いいよ」

あんな泣き顔で言われたら断れるわけがなかった。

気付くと加賀美はとなりにいて
私の背中に手を回してきたので
私も彼の背中に手を回して抱きしめる。

加賀美はやっぱり男の人という体つきと
大きくて暖かい手で私のことを今にも消えそうなものを触るように抱きしめた。

──食事制限がなくても食欲がなく、あまり食べていないひょろっとした体と、冷たくて細い手の私とは大違いだった。

しばらくの間、遠くで聞こえる楽しそうな笑い声とは裏腹に、加賀美が啜り泣く声だけがこの部屋に響いていた。

あれからどれくらい経っただろうか。

長いと言われれば長い間だったし、短いと言われたら短い時間だったと思う。
　

加賀美が私の後ろに回していた手を解き、私に向き合った。

加賀美の目からは今もなお涙が溢れていた。

私は誤魔化すように笑いながら

『何で当事者じゃないのに1番泣いてるの』

というと

「それは

Aが好きだから」
『え？』

私の聞き間違いで無ければ私が好き、と言った。

「だから、

Aのことがlikeじゃなくてloveの方で好きで、好きな人があと二年で死ぬって知ったら普通泣くだろ」

明確に言った。私のことが好きだと。

だから私より泣いてたのか、と何故か納得している自分と

いつから、何がきっかけで私のことが好きなんだろうか、そもそも今のは幻聴じゃないのか、と混乱している自分がいる。

もしかして夢じゃないのか、と疑い始めた私は手の甲をつねってみる。

痛い。普通に痛い。
ということはこれは現実だ。ちょっとよく分からない。

この状況に全く理解が追いつかない私の一方で、爆弾を落とした当の本人は
耳を赤く染め、背中を丸めて両手で顔を覆っていた。

かわいいな…