EPISODE.21 ページ21
.
｢北斗！久しぶりじゃーん、元気してた？｣
笑顔を向けて、声をかけてきた風磨。
俺は何も言うことができず、口角を上げることもできない。
｢なになに、お前らまだつるんでたの？ウケる。浴衣とか着ちゃってはしゃいでんねー｣
風磨から向けられる言葉は、小さなトゲがたくさんついていて。
俺に対する悪意が伝わってくるようだった。
｢樹も慎太郎もまだ北斗と一緒にいたんだ。よくこいつの長々としたつまんない話とかずっと聞いてられるよね｣
｢おい、風磨ふざけんな。北斗行こう、聞かなくていいよ｣
樹が俺の手引っ張って、風磨から離そうとするけど。
風磨は俺に向けた悪意を止めることはない。
｢いやー、高校ではうまくやってんだ。よかったね、優しい友達がいてくれて。
顔がいいやつはいいよね、何やってもチヤホヤされるし、話も最後まで聞いてもらえるしな。
ムカつくんだよな、お前みたいなやつ｣
だんだんと周りの音が聞こえなくなってきて、風磨の声だけがダイレクトに入ってくる。
顔だけのくせに、つまんねえ、樹も慎太郎も優しいな、とか。
俺に向けられた悪意の言葉が胸に刺さって抜けない。
真夏なのに手先が冷たくなってくる。
目の前が真っ暗で、呼吸も浅くなってきた。
(ああ……思い出した……)
1ヶ月くらい3人と一緒にいたから、忘れてしまっていた。
俺は風磨の言うような人間なんだ。
つまらなくて、周りに気使わせて、人をイラつかせていることにも気づかないようなそんな人間。
｢風磨いい加減にしろよ。お前は北斗のこと妬んでるだけだろ｣
｢あ？｣
慎太郎と風磨が一触即発の空気だ。
ああ、俺のせいだ。
俺がいるからこうなるんだ。
(消えたい………)
過呼吸を起こす前に、この場から走って逃げ出した。
後ろから名前を呼ばれた気がしたけど、とにかく走って走って人気のないところまで行きたかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 172人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たむら(プロフ) - なつほく。さん» ありがとうございます。初めてコメント頂けてとても嬉しいです！これからもよろしくお願いします( ˘︶˘ ) (5月7日 19時) (
レス) id: 9b094e61db (このIDを非表示/違反報告)
なつほく。(プロフ) - はじめまして！ほくじぇの2人が好きで読ませて頂いています！！お気に入り登録もさせて頂きました！！これからの更新も楽しみにしています！！ (5月6日 23時) (レス) id: 77d33224f0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たむら | 作成日時：2022年2月22日 22時
