EPISODE.03 ページ3
.
「松村、これ代わりにやってくんない？」
放課後、そう言われて渡されたのは明日のHRで使う資料。
数枚のプリントを冊子にしてホッチキスで止める作業を今日の日直に任されていたらしい。
その今日の日直は仕事を放棄して俺に押し付けようってわけ。
「頼む！今日バイトなんだよ」
「もうひとりの日直は？」
「今日休んでてさ・・・、松村にしか頼めないんだよー・・・」
わざとらしく困った顔をして、俺に頭を下げるクラスメイト。
名前も分からない彼だけど、どんなやつかは知っていて。
断ったらあからさまに舌打ちされることが分かっていたから得意の愛想笑いで受け入れた。
「さんきゅ！まじ助かる！」
そう言って一目散に教室から消えた。
時々思う、自分の言葉を伝えないせいでなんでも受け入れる便利屋みたいに思われていると。
でも断って小さないざこざが起こるよりは俺が我慢すればいいだけの話だから別にいいのだけど。
「はあ・・・・・・・」
誰もいない教室で、ホッチキスをとってひとり作業を始める。
カチカチとひとり作業を進めるなか、ふと人の気配を感じて後ろを振り返る。
「北斗、またため息ついてるよ」
「＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿........」
まるで映画のワンシーンのように、夕日に照らされたジェシーが教室の入り口に寄りかかっていた。
・・・・こいつ、ハリウッドスターかよ。
てか、なんでいんだ。
「何、雑用させられてんの？」
「まあ・・・」
「俺も手伝うよ」
「え」
勝手に俺の前に座ったジェシーは、かばんを置いてもうひとつのホッチキスでプリントを留め始めた。
それもなぜか楽しそうに笑っている。
理由はわからないけど、ジェシーは毎日楽しそうだ。
「・・・別に、手伝ってくれなくていいよ。ひとりでできるし」
夕方になるにつれ、表情筋が疲れてくる。
愛想笑いをするのもめんどくさくて、思わず真顔になる。
あまり誰とも関わり合いたくない。
特にこんな、太陽みたいな人気者と。
「ひとりでできるだろうけど、ふたりでやった方が早いでしょ」
当たり前のようにそういうジェシーはまちがいなくいいやつ。
人生の主人公だ。
そんなジェシーに素直に感謝できない俺はきっとただの嫌なやつ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 172人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たむら(プロフ) - なつほく。さん» ありがとうございます。初めてコメント頂けてとても嬉しいです！これからもよろしくお願いします( ˘︶˘ ) (5月7日 19時) (
レス) id: 9b094e61db (このIDを非表示/違反報告)
なつほく。(プロフ) - はじめまして！ほくじぇの2人が好きで読ませて頂いています！！お気に入り登録もさせて頂きました！！これからの更新も楽しみにしています！！ (5月6日 23時) (レス) id: 77d33224f0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たむら | 作成日時：2022年2月22日 22時
