EPISODE.12 ページ12
-M-
学校をサボって家に帰ってきた。
家には基本誰もいない。
別にネグレクトとか虐待とかされてきた訳ではなく、父親は出張が多くて、母親は夜勤が多いってだけ。
子どものときは寂しさを感じることもあったけど、今では当たり前。
ただ、一軒家で静寂な中、一人で過ごす夜は眠れないだけ。
制服のままベッドに潜り込む。
眠りたい。早く寝て、全て忘れたい。
だけど、この家ではほとんど眠れたことがない。
ああ……ダメだ、目を閉じると余計に嫌なことばかり蘇ってくる。
『ーーーー北斗のこと攻略できた？』
『ーーーー作戦立てようぜ』
『ーーーー北斗ってさ、ちょっとうるさくね？』
『ーーーーつまんない話長々とすんなよ』
脳内に直接突き刺さるように、声が聞こえてくる。
いつしか、ジェシーや樹、慎太郎の声は消えていき、あいつの声だけが脳内で鳴り響く。
『ーーーーみんなお前のこと嫌いなんだぜ』
あいつの言葉が、刃物のように胸に突き刺さったまま抜けない。
(苦しい……くるし……)
だんだんと息が浅くなってくる。
髪の毛をむしるように頭を抱える。
消えたい、このままこの世界からも。
ベッドから起き上がって、机の奥底に閉まってあるカッターを取り出す。
それをもって洗面所まで行き、カッターの刃を左腕に突きつける。
力を少し入れるだけで、ぷつうっと血が溢れ出てくる。
スーッとカッターを滑らせると、血がダラダラと流れ出す。
真っ赤に流れる血を見て、俺はいつもこう思う。
｢あー……生きてる………｣
自分の殻に閉じこもるようになって、人との繋がりを断つようになって、生きている実感がなくなってきたある日。
なんとなくカッターで腕を切ってみたら、ぶわっと生きている実感が湧き上がってきた。
それから癖になり、消え去りたいという思いが強くなったときに繰り返すようになってしまった。
ドラマや映画では自死の方法として描かれるけど、実際に手首を切った程度の出血で死ぬことなんてない。
むしろ、俺は生きるために腕を切る。
おかげで一年中長袖を着けるはめになったけど、いつしかこれが心の支えになっていた。
(あと1回、あと1回だけ……)
そう思いながらカッターを突きつけた時。
｢北斗っ！北斗いるんだろ！開けろ！｣
玄関のドアをドンドンドンドン叩く音が聞こえた。
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たむら(プロフ) - なつほく。さん» ありがとうございます。初めてコメント頂けてとても嬉しいです！これからもよろしくお願いします( ˘︶˘ ) (5月7日 19時) (
レス) id: 9b094e61db (このIDを非表示/違反報告)
なつほく。(プロフ) - はじめまして！ほくじぇの2人が好きで読ませて頂いています！！お気に入り登録もさせて頂きました！！これからの更新も楽しみにしています！！ (5月6日 23時) (レス) id: 77d33224f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たむら | 作成日時：2022年2月22日 22時
