【完々】梅 と 松【梅原裕一郎】

何なのか ページ12

．交際前
．

『あっ、あっ！』
「なに急に」

Aが泊まりに来て、さあ寝ようとしたところで何か叫び始めた。とてもうるさい。

「どうした」
『アイス食べたくなっちゃった』
「寝ろ」
『やだ！アイス食べたい！ストック無いの？』
「お前ん家じゃないから無い」
『じゃあ買ってくるまでだ』
「頭悪いな」

食べたいと思ったら、食べないと気が済まないタイプの人間は大変だな。
寒いのにアイスなんて暖房付けて外出ないといけない。

『あれ、うめも行ってくれるの…？』
「一人じゃ危ないでしょ」
『優しいかよ…！さすが！じゃあ行こ』

何故かお揃いで買ったサンダルをはいて外に出た。寒すぎて震える。素足だし。

『うう〜寒い…涙出そう』
「フード被っとけ」
『うん…』

俺が貸したパーカーのフードを被ったら、サイズが大きいせいで視界が狭くなった。少し折ってやるとAの大きな目がちゃんと見えるようになった。
さっきまで腕まくりをしてた袖も、今は寒さで手が隠れるくらいになってる。

『あ、まってズレそう』
「なにが？」

周りに人がいないのをいいことにパーカーを捲って何をするかと思ったら、履いていたスウェットがズレて来たらしい。これも俺の。

「もうちょっと太れよ」
『いやうめのスウェット履くだけのために太りたくないよ』
「しょうがないな」

Aのウエストに合わせて紐を縛ってやるとだいぶ細いのが改めて分かった。まじで道端で何してんだ。

『えへへ、ありがとう』
「寒いから行くぞ」
『はーい』

俺はこいつの召使いか何なのか分からないけど、コンビニに入って楽しそうにアイスを選ぶ横顔を見たら何でも良くなった。

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