其の伍拾捌 義勇視点23 ページ9
それから、
「…………………お願いします」
何か思うことがしのぶにはあったみたいだが、ややあって返事があった。
許可を得て義勇が振り返ると桜の体は薄い布でおおわれていたので、この目で体の様子を確認することはできなかった。
そのことが残念だったのか、肌を見れるなんて少し期待していたぶん裏切られてがっかりしたのか。
この場にそぐわない不謹慎な欲望を持つ己も、桜の前では柱でありながら、やはり一人の男なのだと実感してしまった。
そんなことをしのぶに悟られては殺されかねないので、義勇は冷静なふりをしつつ桜に負担をかけないようにうつ伏せにした。
それは、まるで壊れ物を扱うかのように繊細で優しい手付きだった。
背中にも異常はない。
再び義勇の力を借りて仰向けにし、脈、胸の動き、内臓の動き、筋肉の様子を一つずつ、しっかり丁寧に診ていった。
「どうやら本当に眠っているだけのようですね」
頬のすり傷、筋肉疲労以外でとくに気になるような怪我は見当たらず、臓器にも異常は感じられなかった。
毒を扱うのでそれなりの知識があるしのぶは、桜が毒をくらったことも想定したが、けっきょくそれも違っていて。
桜がなぜこうなったのか結果は原因不明だった。
「冨岡さん、何があったんですか?」
「…………」
桜の乱れた隊服を戻すしのぶの問いに義勇は口をつぐんだ。
あの時、何があったのかなんて義勇が知りたいくらいだった。
説明できるとすれば急に体調を崩したということぐらいだが、親身になって友を心配するしのぶは納得しないだろう。
「血鬼術にかけられているわけでもなさそうですし、何か原因になるようなことはありませんでしたか?」
しのぶに問われ義勇は考えてみたが、しのぶの言うように鬼が血鬼術を使っていたような素振りはなかった。
どう答えればいいのか言いあぐねている義勇に、しのぶが苛立ち始めているのは雰囲気でわかった。
桜のために、しのぶも早く原因をつきとめてその対策をしたいのだろうことはわかる。
だからこそ協力しなければ、何か言わなくてはと、義勇が無言の圧力に負けそうになっていた時に、桜が倒れる寸前に発した言葉を思い出した。
「……拾ノ型」
義勇が何があったと尋ねたとき、確かに桜はそうこぼした。
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桜花(プロフ) - (あ、打ち間違いが……すみません(^^;)胡蝶、宇髄が呼んでる。珍しいな。二人で任務か? (2021年7月21日 23時) (レス) id: 12e45606b3 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 聞いてますよ。そんな所から長々と話されても困ります。嫌がらせでしょうかあと、2年前じゃないんですか。そんなだからみんなからきら………。ド派手にお邪魔する!胡蝶、ここにいたのか。探したぞ!胡蝶しのぶと宇髄天元様じゃ! (2021年7月21日 6時) (レス) id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» いや、だから言おうとした。炭治郎と出会ったのは三年前のことで…………胡蝶聞いてるか? (2021年7月20日 22時) (レス) id: 12e45606b3 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - それで炭治郎君に会ったんですね!なんであの時私に言わなかったんですかね。気になります。今度から気になることがあったら、言ってくださいね。胡蝶しのぶです。これからも頑張ってください。 (2021年7月20日 6時) (レス) id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» 懐かしいな。あれ以来、おまえはよく頑張っていると思う。 (2021年7月17日 23時) (レス) id: 12e45606b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜花 | 作成日時:2021年6月18日 22時