あなたがたった一度の恋でした２【水と炎で逆ハー】

其の玖拾伍 冨岡さん４６ ページ45

「くるぞ」



冷静な冨岡さんの言葉と同時に数体の鬼が姿を現した。

欲望に駆られ本能のままに動く醜い化け物。

冨岡さんが抜刀する音を聞いて私も刀を抜いた。



同時に飛びかかってきた鬼、二人ならものの数秒で片付けることができた。

やっぱり冨岡さんがいてくれるだけで違う。

討伐にかかる時間も、常に襲う不安も。

冨岡さんがついてくると言い出した時は、言うことを聞いてくれなくて困ったけど、今は少し感謝した。









「この辺りの村はここだけでしょうか」

「確認してくる」

「あ！待ってください！」



スタスタと一人で先に行ってしまう冨岡さんを慌てて追いかけた。



「冨岡さん！待ってくださ………いっ！」



急に立ち止まった冨岡さんの背に、おもいっきり顔面からぶつかってしまった。

なんか、ここ最近で前にもこんなことがあったような気がする。

その時と同じように、今度もたいして高くもない鼻が一番の被害を受けてズキズキと痛む。



「急に止まらないでくださいよぉ………」



痛たた…、とその鼻先を指先で覆いながら冨岡さんの背中を見上げた。



「人だ……」

「え……」



何を呟いたのか聞き取れなかったけど、聞き返す前に冨岡さんは駆けていってしまって。

私はまたそのあとを慌てて追いかけた。

其の玖拾陸 冨岡さん４７→←其の玖拾肆 冨岡さん４５

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す