あなたがたった一度の恋でした２【水と炎で逆ハー】

其の玖拾肆 冨岡さん４５ ページ44

鬼が出たという情報がまた入り、私は現地に向かっていた。

この短期間で鬼による被害が頻繁に起きている。



昨夜も、冨岡さんが討伐したばかりだというのに、その翌日にはもう鬼がでるなんて。

それだけ鬼舞辻無惨が活動を活発にしているということなのだろうか。









それにしても、



(冨岡さん、大丈夫かな………)


隣を走る冨岡さんをチラリと横目で見た。

任務から帰って来たばかりなのに、すぐに出陣するなんて。




そもそも、この任務は私に来たものだった。

昼間、羽織を繕い終えて、そろそろお暇(いとま)しようかと思っていた時に椿が飛んできた。(義勇の容態を椿も聞いたのか、ピンピンしている彼の姿を見て椿も驚いていてとか)

山奥で鬼の被害が出ているので向かうようにと。

任務の内容を一緒に聞いていた冨岡さんが、当たり前のように腰帯に日輪刀を差すのを見て私は思わずたずねていた。

『一緒に行くつもりですか？』って。

そしたら、冨岡さんはこれまた『無論だ』と、自分が行くことがさも当然のように返してきた。

だから、帰宅したばかりか傷を負った体を休めてほしいと私は何度もお願いして言い聞かせようとするのに、冨岡さんは行くの一点張りで言うことを聞いてはくれなかった。



(私が足を引っ張らないようにしないと……！)



ろくな休息もできなかった冨岡さんの足手まといはしたくなかった。









◆◆◆◆◆









任務先は雪山の中にある小さな村。

鬼が出たと報告を受けて駆けつけた時に見る光景はいつも同じ。

また、間に合わなかった。




「ひどいっ……」



家屋は破壊され、周囲には派手に飛び散った血と、肉の塊と化しバラバラになった死体で悲惨なものだった。

村人はその原型をとどめてなくて、すでに鬼が食い散らかした後だった。

其の玖拾伍 冨岡さん４６→←其の玖拾参 義勇視点２９

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す