あなたがたった一度の恋でした６【水と炎で逆ハー】

其の参佰 遊郭編１６ ページ49

やる気いっぱいだった伊之助はいきなり待機命令を受け不服そうな顔をしている。



｢夜までにやってほしいことがあります。鬼が屋敷内に現れたり消えたりするとなると、どこかに鬼が出入りするための出入口があるはずです。それを見つけ出してほしいんです。伊之助くんならできますよね｣

｢おう！もちろんだぜ！！｣



聞いた話では、天元は夜の間、店の外をずっと見張っていたのに鬼が出入りする気配はなかったという。

それなのに嫁や善逸は屋敷から姿を消し、伊之助が潜入した店に現れたという鬼が自由自在に姿を現したり隠したりできるということは可能性の一つとしてこう考えることができた。



｢鬼の巣窟は特定できていなくても、私たちが潜入している三つの店のいずれかで間違いはないはずです｣

｢となると、一番怪しいのは“京極屋”ですか？｣

｢潜入してすぐに善逸くんが姿を消したとなると、私も“京極家”が一番怪しいと思います。ですが、伊之助くんも潜入後短時間で遭遇しているので、まだ決めつけないほうがいいでしょう。それから、鬼は屋敷内に巣を作っているという考えと、鬼がその店で人間になりすまして働いている可能性も･･････｣



大騒ぎにならないのは消えた人間が“足抜け”扱いにされていることもあるだろうが、誰にも気付かれなかった背景にはこういう経緯(いきさつ)もあるんじゃなかろうかと思う。



｢巧妙に人間のふりをしていればいるほど、バレないように人を殺すのには慎重になる｣

｢そうか･･･殺人の後始末には手間がかかる。血痕は簡単には消せねぇしな｣



そうーー･･･いくら上弦だったとしても騒がれずひっそりと殺すには時間も場所も選ぶ必要があるはず。

それに人質、あるいはこちらの情報を吐かせるために生かされている可能性もある。

それに賭けるなら天元はみんなの生存を諦めたかのような口振りだったが生存にもまだ希望がもてた。



｢どんな状況だったとしても、俺は善逸も宇髄さんの奥さんたちも･･････みんな生きていると思う。桜さんはどう思いますか？｣

｢私も同じ意見です。ですから行動は慎重に行いましょう。私たちが焦って動けば敵に気付かれてしまう｣

｢はい。伊之助もそのつもりで行動してほしい。そして、伊之助はしばらく単独だ。絶対に無理はしないで死なないでほしい｣

｢お前たちが言ったことは全部な、今俺が言おうとしてたことたぜ！！｣



伊之助は合点承知したと口角を上げた。

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