あなたがたった一度の恋でした６【水と炎で逆ハー】

其の弐佰玖拾漆 遊郭編１３ ページ46

鬼の手がかりを手に入れ天元の元に行くために“足抜け”という言葉を使ったのだろう。

だが、天元と合流する前に正体に気付かれて鬼に捕らわれてしまった。



(どっちにしても“足抜け”が鬼にとってかなり都合がいいというのは確か。人がいなくなっても遊郭から逃亡したのだと思われるだけだもの。どちらにしろ、日記は偽装ね)



鯉夏の話から桜と炭治郎は顔を見合せ確信した。



｢鯉夏花魁、他にここ最近でおかしなことは起きていませんか？｣

｢おかしなこと？
さあ･･････
でも、どうしてだい？｣



鯉夏は桜の質問の意味を考えてはみたものの、特に思い当たる節はなかったのか鯉夏は逆に聞いてきた。



｢足抜けというものは他の店でも頻繁に起きているのかと思ったものですから｣



当たり障りのない返事をした桜の回答を、鯉夏は特に不審がる様子もなく聞いていた。

先程、二人が話していた“京極屋”のこと以外は特におかしな出来事は起きていないと話してくれた。

重要な話は手に入らなかったが、桜はそれが鬼が人間には気付かれないように秘密裏に動いているからこそだと考えた。

鬼が正体を現し活動しているなら騒動になっているはずだから。






◆ ◆ ◆ ◆ ◆






そんな話をしてから。

現在、お互いが今持っている情報を交換するために、桜、炭治郎、善逸、伊之助は天元と待ち合わせをしていた。



｢だーかーらー！俺んとこに鬼がいんだよ！｣



先に合流していた桜と炭治郎は、伊之助が潜入している荻本屋で起きた奇っ怪な出来事について本人から大袈裟なほどの身振り手振りで報告を聞いていた。

京極屋でも変な事件は起きていたし、天元が目を付けていることもあり誰かが潜入している店のどこかが鬼の棲家だというのは間違いなさそうだ。

ただ、ここだ！と確定しきるだけの情報というのがあまりにも少なすぎた。

だからこうして、みんなで奮闘しているわけなのだがーー



｢こういう奴がいるんだって！こういうのが！！｣

｢いや･･･うん、それは、あの･･･ちょっと待ってくれーー･･･｣



伊之助が一生懸命何かを伝えようとしてくれているのはわかるんだけど、二人にはその内容が解読できなかった。

言葉も動きも必死さだけが伝わってきて肝心の中身が全然伝わってこないのだ。

其の弐佰玖拾捌 遊郭編１４→←其の弐佰玖拾陸 遊郭編１２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す