あなたがたった一度の恋でした６【水と炎で逆ハー】

其の弐佰玖拾参 遊郭編９ ページ42

｢奥さん、二人なんとかならないか？｣

｢そうだね、二人ならなんとかなるだろう｣

｢悪ぃな奥さん、二人を頼むわ｣



天元の素顔を見た楼主の妻がまるで乙女の少女のように頬をピンクに染め、楼主に相談もなく妻の一存でおもしろいように炭治郎の就職が決まった。

隣で楼主が口をあんぐりと開け、奥さんを何とも言えない表情で見ていたことに少々気の毒に桜は思う。

そんな桜の元に天元が近づく。



(あとは任せた。頼んだぞ)

(御意)

(･･････気を付けろ)



視線と雰囲気だけで天元と桜は会話し、天元は残り二人を残りの店に潜入させるために店を後にした。

桜と炭治郎も店の中へと促され、楼主の後について店に潜入した。






◆ ◆ ◆ ◆ ◆







少し強引に雇ってもらった炭治郎は早速雑用を頼まれ、せっせと働いていた。

桜とは屋敷の中で離れ離れにされてしまい別行動を取らざるを得なくなってしまった。

天元の嫁のことや鬼の情報を得るにはそちらの方が都合がいいのだが、少々計算違いだった。

一緒に雇ってもらったのは桜の身に“何が”起こってもすぐに助けられるように傍にいたかったからなのだがーー



(とは思っていても、結局俺はいつも桜さんに守られてばかりだ･･････)



いろいろと考え気落ちしながら、炭治郎は部屋でもくもくと洗濯物をたたんでいた。

そんな炭治郎の元に二人の少女がやって来た。



｢炭子ちゃん。ちょっとあれ鯉夏花魁の部屋に運んでくれる？人手が足りなくて･･･｣



山積みになった荷物を運んでほしいと頼まれ炭治郎は洗濯物をたたむ手を止めた。



｢わかりました！鯉夏花魁の部屋ですね。すぐ運びます｣



天井に着きそうなほどに重ねられた量を、両手で軽々と持ち上げて運ぶその後ろ姿を、同じ見習いである半だら帯の女の子二人が頼もしく見ていた。






炭治郎は鯉夏の部屋に向かう途中、キョロキョロと辺りを見渡し桜の姿を探した。

その時、ちょうどこちらに歩いてくる桜を見つけた。

店に入った時の衣装から店用の衣装に着替えさせられたのか、炭治郎は桜のその姿に頬を染めた。

炭治郎に気付いた桜が歩みを早め目の前まで来ると、ますますその美しさが際立って見えた。

きっちりと化粧を施されたその顔はとても美しく、それに合わせて美しい刺繍の入った着物を着た桜に炭治郎は惚けた表情で見惚れていた。

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