あなたがたった一度の恋でした６【水と炎で逆ハー】

其の弐佰伍拾肆 無限列車編５１ ページ4

猗窩座の頚が血飛沫を上げ宙を舞って地面に転がった。



「っ･･････はぁ･･･はぁ･･･っっ･･･はぁ･･････」



桜はその場にガクリと両膝をついた。

刀を持つ手がカタカタと震えている。



「桜、大丈夫か？」

「っ、はいっ･･････っ」



全身で息をする桜の肩を支えながら、杏寿郎が心配そうに声をかけた。

桜も大丈夫とは言ったものの体全体が鉛になってしまったようにズシリと重たく感じていた。

拾ノ型と玖ノ型を同時に使ったこと、呼吸を多用したからだ。

それでも、それと引き換えに得たもののほうが大きいように思えた。



「上弦の参、倒せたんですよね」

「ああ。よく頑張ったな」



頭を優しく撫でてくれる杏寿郎の手がとても心地良い。

桜は目を閉じて、余韻に浸っていた。



すべて終わった。

お互い血だらけで傷だらけだけど、ホッとして笑いあった。




ーーその時、



「まだです！まだ終わってないっ！！」

「なんだあれ！？！？どうなってやがる！？」



焦ったような炭治郎と伊之助の声に二人はそちらを向く。

伊之助が震える手で指差す先の光景に、杏寿郎と桜は目を見開いた。

猗窩座が転がった自分の頭部を両手で掴みとると、頚の切断面と接着するように胴体に押し付けているのだ。

もうすぐ太陽が昇る。

太陽の光さえ浴びれば猗窩座は死んでしまうだろう。

だけど、陽が昇る前に猗窩座の再生が先だったらーー。



「･･････っ･･･！」



杏寿郎は瞬時に抜刀し槍投げのように日輪刀を猗窩座の頭部目掛けて投げつけた。

刃は猗窩座の頭を撃ち落とすような形で、額から後頭部にかけて貫通し、遠くへと弾かれ地面に転がると、頭部はすぐにボロボロと塵となって消えてしまった。

それを見た杏寿郎が、今度こそ勝ったと胸を撫で下ろした。


杏寿郎の注意が一瞬、頚にそれた瞬間に桜が大声を上げた。



「危ないっ･･････！！」



猗窩座が杏寿郎目掛けて左脚を振り下ろしてきたのだ。

その光景に杏寿郎はこれでもかと驚き目を開く。



(体の崩壊が始まらないのかっ･･････！？！？)



しかも、脚を斬り落としたくても杏寿郎の手元には日輪刀がない。

まずいと焦った瞬間、桜が残された渾身の力で猗窩座の膝下から脚を斬り落としてみせた。

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