其の弐佰漆拾捌 杏寿郎と炭治郎５ ページ28
｢もう一度お願いします！！｣
(ええっ！？気付いてない！？！？)
それどころか、闘志に燃えた桜は杏寿郎に再挑戦を申し込んでいるのだ。
おまけに薬湯の匂いを浴びたことさえ気にならないようだ。
一度浴びれば二度も三度も変わらないような気もするが、初めに言っていた『しのぶにバレないように』という概念はどこにいったのだろう。
せめて、杏寿郎が気付いてくれればと炭治郎はチラリと横目で見る。
「いい心がけだ！」
止めるどころかこちらも乗り気だ。
やる気に満ちた二人を止めるのは水を差すようで申し訳ないが、この後のことを考えるとやっぱり止めた方がいいのだろうか。
一人心の内で葛藤する炭治郎をよそに、桜は顔にかかった薬湯を袖で拭くと、
｢もう一度お願いします！｣
何度も、
「お願いします！」
何度も何度も。
「もう一度！！」
挑戦し続けた。
(二人ともすごいな･･････)
炭治郎は、もはや止めることも忘れ二人の訓練を食い入るように見ていた。
以前とは違う、二人の手の動きを目で追えていた。
いつしか桜は、薬湯を浴び一雨降ったのかと思えるくらいずぶ濡れになっていた。
｢桜、体はなんともないか？｣
｢はい。なんともありません｣
あれだけ肺を使ってもあばら骨は一度も痛みを感じなかった。
これも杏寿郎が大いに手加減をしてくれたからだろう。
｢煉獄さん、ありがとうございました｣
｢俺の方こそ良い訓練になった｣
｢でも悔しいですね。一回も煉獄さんに勝てませんでした｣
｢継子とはいえ、桜にそうやすやすと勝ち星をあげていては柱としての立場がないからな！｣
手加減はしても勝たせるつもりはない。
悔しくてたまらないと顔に出す桜に、杏寿郎はそう言って豪快に笑ってみせた。
｢この薬湯も臭いからかけられたくなかったのに何回もかけられましたし！｣
悔しそうに空を仰ぎながら嘆く桜を見て、今でも嫌いなことに変わりはなかったのだなと炭治郎は内心苦笑をもらした。
｢すまん！そこは手加減できなかった｣
｢おかげでびしょ濡れ･･･････････････｣
ハハっと笑い濡れて垂れ下がる前髪を整えていた桜の動きがハタと止まる。
それから、すぐにサァーっと顔が青ざめていった。
やっと自分におかれた非常にまずい状況に桜は気付いたのだ。
其の弐佰漆拾玖 杏寿郎と炭治郎６→←其の弐佰漆拾漆 杏寿郎と炭治郎４
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 49人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
風花 - 桜花さん、お久しぶりです。覚えて頂けていますでしょうか？久しぶりにニヤニヤしながら一気に読んじゃいました(笑)これからも更新を楽しみにしています(*^^*) (2023年4月12日 4時) (
レス) id: 0f5aae934e (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇とリヴァイ推しさん» 更新亀より遅いのに通っていただき、ありがとうございます( o̴̶̷᷄ ·̫ o̴̶̷̥᷅ )義勇さん、きっと不死川さんも喜ぶと思います。でも、喧嘩はしないでくださいね( *´꒳`*) (2022年4月30日 13時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇とリヴァイ推し - 不死川…俺の継子に(稽古してくれた)ようだな…。感謝する…。後で、懐にお萩忍ばせて(おいて)あげよう。義勇と杏寿郎推しから“義勇とリヴァイ推し”になった。中の人は一緒だからな。冨岡義勇だ。ゆっくりで良いから頑張ってくれ…。 (2022年4月25日 20時) (レス) @page33 id: 39583b605b (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» お久しぶりです(^^)ずいぶんと更新がストップしていて、すみません。まだまだ亀更新ですが、頑張ります！ (2022年3月19日 19時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - むっ！冨岡と夢主いつのまにか仲良くなっているではないか！！これから、この2人が恋仲になりそうだな！！炎柱、煉獄杏寿郎だ！これからも頑張ってくれ！！ (2022年3月14日 6時) (レス) @page23 id: 3737ce31ed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜花 | 作成日時：2022年1月10日 11時
