其の弐佰漆拾壱 善逸と伊之助1 ページ21
それから、さらに数日経った日のこと。
桜の怪我は順調に回復していたが、折れたあばら骨が時々痛むせいでまだ体が思うように動かせないでいた。
退屈しのぎにと、しのぶが用意してくれた本をベッドの上で読んでいるとなにやら廊下が慌ただしくなった。
人の足音のようだが、それは桜の部屋の前に来るとピタリと止まる。
それから単発入れず元気で礼儀正しい挨拶が聞こえた。
「失礼します!」
それとほぼ同時にドアが開き、桜は本からそちらへと視線を移すと少年二人がもつれ合うように入ってきた。
「善逸くん!と、伊之助くん?」
珍しい来客に桜は目を丸くして2人を見た。
二人は入院着ではなく隊服を着用しているから、今日が退院なのだろう。
わざわざ挨拶に来てくれたんだろうか。
だけど、入り口から這い出ようとする伊之助の姿に違ったのだろうかと思い直す。
「バカ!俺はいいって言ってんだろぉが!!」
「なに言ってんだよ!ここまで来たんだろ!」
伊之助の腰に善逸が両腕を回して逃げるのを阻止しようとしている。
中に入ることを拒んでいるような伊之助だが、よく見ると被り物の上からでも分かるくらい赤くなっていた。
伊之助の性格上、どうどうとお見舞いに来ました!なんて恥ずかしくて言えないのだろう。
だとすれば、照れ隠しのようなあの態度にも納得がいき桜は笑みをこぼした。
「二人ともお見舞いに来てくれたんですね。ありがとうございます」
微笑む姿が想像できるような桜の声に、二人の動きがピタリと止まった。
嬉しそうに微笑む桜は朝日を浴びることで、二人の目はますます綺麗に映る。
善逸なんて鼻の下を伸ばして顔の皮膚がだらしなく垂れ下がっていた。
伊之助に至っては去ろうとする意思をなくしてしまっただけでなく、被り物の上からでも分かるほどほわほわと頬をピンクに染めていた。
彼らとは入院してから一度も顔を合わせていなかったので、いつも通りの元気な姿に桜は安心した。
「善逸くんも伊之助くんも全快のようで良かったです」
」
「桜はまだ……なのか?」
入院着を着用しベッドの上に腰掛ける桜を見て、珍しく伊之助が心配そうな声で声をかけた。
「もう少し時間がかかりそうです」
「そうか……」
なかなか治らない体に桜自身も情けなさを感じ、自然とその顔に苦笑が浮かぶ。
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風花 - 桜花さん、お久しぶりです。覚えて頂けていますでしょうか?久しぶりにニヤニヤしながら一気に読んじゃいました(笑)これからも更新を楽しみにしています(*^^*) (2023年4月12日 4時) (レス) id: 0f5aae934e (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇とリヴァイ推しさん» 更新亀より遅いのに通っていただき、ありがとうございます( o̴̶̷᷄ ·̫ o̴̶̷̥᷅ )義勇さん、きっと不死川さんも喜ぶと思います。でも、喧嘩はしないでくださいね( *´꒳`*) (2022年4月30日 13時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇とリヴァイ推し - 不死川…俺の継子に(稽古してくれた)ようだな…。感謝する…。後で、懐にお萩忍ばせて(おいて)あげよう。義勇と杏寿郎推しから“義勇とリヴァイ推し”になった。中の人は一緒だからな。冨岡義勇だ。ゆっくりで良いから頑張ってくれ…。 (2022年4月25日 20時) (レス) @page33 id: 39583b605b (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» お久しぶりです(^^)ずいぶんと更新がストップしていて、すみません。まだまだ亀更新ですが、頑張ります! (2022年3月19日 19時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - むっ!冨岡と夢主いつのまにか仲良くなっているではないか!!これから、この2人が恋仲になりそうだな!!炎柱、煉獄杏寿郎だ!これからも頑張ってくれ!! (2022年3月14日 6時) (レス) @page23 id: 3737ce31ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年1月10日 11時