其の弐佰漆拾 冨岡義勇67 ページ20
「この間のこと嫌だったなら謝る。だからいつものように接してくれ」
その声があまりにも切なく聞こえて、桜はつい義勇のことを見てしまった。
うつ向きかげんな義勇の目が悲しげに揺れているのを見て桜は思う。
自分の行き場のない思いが、義勇を不安にさせ傷付けてしまったのだと。
心臓が押し潰されそうなほどドキドキしたけど、義勇の言う嫌なことなんて一つもなかった。
本気で触れられたくなかったら、傷に響いてでももっと抵抗していた。
ただ、恥ずかしかったのと、恋仲でもないのに抵抗も見せず誰にでも体を開くような不埒な女に見られていたらと思うと、どんな風に接していいのかわからなかっただけなのだ。
あと、義勇相手にどうしてこんな気持ちになるのかということも・・・・・・。
「すみません、冨岡さんのこと傷付けてますよね。わかってるんです。 でも私自身あの日から冨岡さんにどうやって接すればいいかわからないんです」
「………………」
「あの時………冨岡さんに触れられることが嫌だと思えなかった自分が変な奴だと思われてないかと考えたら、冨岡さんの顔をまともに見れなかったんです」
自分が悩んでいる間も、彼女は彼女なりに思い悩んでいたことを知った。
むしろ、夫婦でもなければ恋人でもない義勇が桜の肌に触れることのほうがおかしいのではないだろうか。
義勇はそれを申し訳なく思いつつ、不謹慎ながら桜の言葉を頭の中で復唱し胸をときめかせていた。
『触れられることが嫌と思えなかった』
桜の言葉が胸にグッときた。
都合よく解釈すれば希望を持っていていいということだろうか。
「恋仲でもないのに抵抗もしない女なんて変ですよね」
「変ではない。むしろおかしいのは俺だ」
義勇は薄く笑みを浮かべ、何も分かっていない桜の頭に軽く手を乗せた。
目を丸くして不思議そうに見上げる桜も愛らしい。
桜への気持ちに気づいた途端、彼女の存在が愛しくてたまらなくなり。
死からの生還に心臓が脈打ち肌からぬくもりを感じると、それがたまらなく尊く感じ止まらなかった。
「これからは気を付ける(ように努力しよう)」
もう少し。
彼女の気持ちがはっきりとするまでもう少し待つことにしよう。
だけど桜。
触れられて嫌じゃなかった、その感情だけは忘れないでくれ。
おまえの心がが俺に傾きかけている、その証だけは。
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風花 - 桜花さん、お久しぶりです。覚えて頂けていますでしょうか?久しぶりにニヤニヤしながら一気に読んじゃいました(笑)これからも更新を楽しみにしています(*^^*) (2023年4月12日 4時) (レス) id: 0f5aae934e (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇とリヴァイ推しさん» 更新亀より遅いのに通っていただき、ありがとうございます( o̴̶̷᷄ ·̫ o̴̶̷̥᷅ )義勇さん、きっと不死川さんも喜ぶと思います。でも、喧嘩はしないでくださいね( *´꒳`*) (2022年4月30日 13時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇とリヴァイ推し - 不死川…俺の継子に(稽古してくれた)ようだな…。感謝する…。後で、懐にお萩忍ばせて(おいて)あげよう。義勇と杏寿郎推しから“義勇とリヴァイ推し”になった。中の人は一緒だからな。冨岡義勇だ。ゆっくりで良いから頑張ってくれ…。 (2022年4月25日 20時) (レス) @page33 id: 39583b605b (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» お久しぶりです(^^)ずいぶんと更新がストップしていて、すみません。まだまだ亀更新ですが、頑張ります! (2022年3月19日 19時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - むっ!冨岡と夢主いつのまにか仲良くなっているではないか!!これから、この2人が恋仲になりそうだな!!炎柱、煉獄杏寿郎だ!これからも頑張ってくれ!! (2022年3月14日 6時) (レス) @page23 id: 3737ce31ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年1月10日 11時