其の弐佰陸拾伍 冨岡義勇62 ページ15
どのくらいの時間をこうして抱きしめられていたのだろう。
安心するからずっとこうしていてもらいたいと思う反面、心臓が踊るようなこのよくわからない感情に、胸がこれ以上はもたないからそろそろ離れたいとも思い始めていた。
「あの、冨岡さん、(嬉しいんですが)少し痛むのでそろそろ離していただけないかと……」
「(気付かなくて)すまない……」
少し遠慮気味に桜が言うと、申し訳なさそうな謝罪のあと義勇がゆっくりと体を離した。
二人の間に隙間ができると、空気の流れで先程まで感じていたお互いのぬくもりも冷えてしまった。
桜は自分から言い出したことなのになぜかそれを少し残念に思っていた。
体を離した義勇は、布団から露出した桜の肩に残る爪痕を目にしてしまった。
あの山の奥での戦いも桜の素肌に痛々しい痕をくっきりと残した。
「これも痕が残ったな」
「!」
完治したこの痕はこれからも一生消えることはないのだろう。
男なら勲章とも呼べる痕だが、女に残るには辛いだろう。
鬼殺隊に入隊した時から想定はしていただろうが喜べたものでもない。
あの日、義勇が一緒に行っていればこの傷は存在しなかった。
義勇がそうはさせなかった。
「っ!」
爪痕を確かめるように義勇が指先で傷痕の上からツゥーっとなぞると、息を飲んだ桜がピクッと体を小さく震わせた。
義勇のその手付きは桜の頬を撫でていた時のように優しかった。
まるで壊れ物にでも触れるかのような丁寧な扱い方が、よけいに桜の羞恥心を煽る。
義勇の指先が何度もその傷痕を往復し、体中に電気が走ったような感覚に桜はキツく目を閉じた。
義勇に見つめられていると思うだけでも恥ずかしさでどうにかなりそうなのに。
義勇が傷痕に触れるたびにそこが熱を持ち、桜の心臓は破裂しそうなくらいバクバクしていた。
それでも不思議と気持ちが悪いとは思わず、むしろ心地良ささえ感じている自分にも桜は驚く。
「…っ…!」
緊張で体を硬直させていると今度は傷口に義勇の唇が触れ、桜はビクッとさらに体を大きく跳ねさせた。
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風花 - 桜花さん、お久しぶりです。覚えて頂けていますでしょうか?久しぶりにニヤニヤしながら一気に読んじゃいました(笑)これからも更新を楽しみにしています(*^^*) (2023年4月12日 4時) (レス) id: 0f5aae934e (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇とリヴァイ推しさん» 更新亀より遅いのに通っていただき、ありがとうございます( o̴̶̷᷄ ·̫ o̴̶̷̥᷅ )義勇さん、きっと不死川さんも喜ぶと思います。でも、喧嘩はしないでくださいね( *´꒳`*) (2022年4月30日 13時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇とリヴァイ推し - 不死川…俺の継子に(稽古してくれた)ようだな…。感謝する…。後で、懐にお萩忍ばせて(おいて)あげよう。義勇と杏寿郎推しから“義勇とリヴァイ推し”になった。中の人は一緒だからな。冨岡義勇だ。ゆっくりで良いから頑張ってくれ…。 (2022年4月25日 20時) (レス) @page33 id: 39583b605b (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» お久しぶりです(^^)ずいぶんと更新がストップしていて、すみません。まだまだ亀更新ですが、頑張ります! (2022年3月19日 19時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - むっ!冨岡と夢主いつのまにか仲良くなっているではないか!!これから、この2人が恋仲になりそうだな!!炎柱、煉獄杏寿郎だ!これからも頑張ってくれ!! (2022年3月14日 6時) (レス) @page23 id: 3737ce31ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜花 | 作成日時:2022年1月10日 11時