あなたがたった一度の恋でした６【水と炎で逆ハー】

其の弐佰陸拾弐 胡蝶しのぶ８ ページ12

部屋割りは比較的軽傷な善逸と伊之助が同室、重症な杏寿郎、炭治郎が同室、桜は個室となった。

桜の診断結果は、肺や心臓など臓器や血管に損傷はみられず、酷い箇所はあばらの骨折ぐらいだった。

その治療の際には上半身を露にする必要もあり、年頃の娘と男性が同室では困るだろうという、しのぶの配慮だった。

その部屋で桜は治療の真っ最中だった。



｢いででででっ！！！｣



半べそをかいて治療に耐える桜。

固定帯により、あばら骨を圧迫固定する治療が施されているのだが、これがギュウギュウと締め付けられるので傷に響いてかなり痛い。

あばらを折られた時よりもその痛みはすさまじく我慢しようとしても半狂乱になってしまっていた。



｢鎮痛薬です。飲んでください｣



上弦の参との戦いよりも治療のほうが痛くてつらいなんて。

水の入った湯飲みと一緒に薬も渡され、桜は半べそをかきながらそれを一気に飲み干した。

その苦さにも顔をしかめる桜の情けない姿。

戦闘中はこんな姿を見せていなかっただろうにと思い、本当に上弦の参と戦った人物と同一人物なのかと、しのぶは苦笑していた。



｢あばら骨の骨折は呼吸がしづらいので、可能でしたら寝てる間以外、1時間に1回痛みを我慢して深呼吸や咳をしてくださいね｣

｢はい｣

｢症状の改善時期は2から4週間ほどです。様子をみながら、そのあと回復訓練をして退院です｣

｢また、お世話になります｣



蝶屋敷で面倒をみてもらったのは、ついこの間のことなのに。

すぐに逆戻りとはなんとも情けない。

そう思ったけど、相手は上弦、死んで帰ってくるよりはマシだった。



｢そうそう、冨岡さんも桜さんがこの任務に就いたことを知ってとても怒ってましたよ｣

｢うそっ！？！？｣



相談もなく、事後報告だったのはやはりまずかっただろうか。

桜が慌てふためく姿に、しのぶがクスクスと笑みをこぼす。



｢嘘ですよ。病み上がりでの任務に、とても心配していました｣

｢しのぶちゃ〜ん、今のこの体にその冗談はきついよ｣



人が悪いしのぶに桜はから笑いしつつ、内心ホッとしていた。

それと、義勇が心配してくれるのはとても嬉しいけど、子供扱いされてるみたいで少し恥ずかしさもあった。

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