其の弐佰肆拾伍 無限列車編42 ページ45
「大丈夫ですか、桜さん?」
「大丈夫、とは言えない姿なんでしょうね……」
今までの戦いをずっと見守っていた炭治郎が心配そうに声をかける。
情けなさに苦笑する桜は、まるで脱け殻のようだった。
遠くでは杏寿郎がたった一人で猗窩座と戦っている。
互角には見えても、瞬時に回復する鬼と、そうはならない人間との戦いは次第に差を生み出し、ヒヤヒヤとする場面は幾度となくあった。
(煉獄さん………)
杏寿郎がなるべくこちらに猗窩座を近付けまいと戦っているのがわかる。
こちらに気をつかいすぎて、その度に攻撃を受けている。
(やはり戻らなければ………)
桜が援護に回ることができれば杏寿郎も猗窩座に集中することができて、その身に攻撃を受けることもなくなる。
桜はまだ力の入らない体に鞭を打って立ち上がろうとするがガクリと膝から崩れ落ちた。
「無理すんじゃねぇ」
倒れ込む寸前、腕を捕まれ支えられた。
見上げると心配そうに(見える)こちらを見下ろす伊之助だった。
桜もずっと伊之助のことを心配していたから、無事な姿を見て安堵した。
「伊之助くん」
「桜、どうしたんだ、その傷……大丈夫なのか?」
伊之助は桜の姿に愕然としていた。
全身血だらけで口の端からは吐血した痕もある。
彼女の身になにが起きたのかは一目瞭然だった。
「大丈夫です。攻撃を防ぎきれなかっただけですから………」
大丈夫かと聞いてみたものの、大丈夫だと返す桜をそうは思わない伊之助。
珍しく壊れ物を扱うように、そっと桜を地面に座らせた。
「伊之助くん、生きていてくれて良かったです」
伊之助も無限列車に巣食う鬼を滅殺してくれたことを桜は思い出した。
致命傷らしき傷は見当たらなくても無傷とまではいかない。
本当なら治癒をしてあげたいのだが、今は体力の回復と温存を優先させる必要があった。
「伊之助くん、ごめんなさい。治癒をする余裕がなくて………」
ギリッと日輪刀を強く握り締める。
いつもの愛らしい表情は消え失せ、深く深く眉間に皺を寄せ、悔しさに耐えるように桜は唇を噛んだ。
一刻も早く杏寿郎の援護に戻るために自分の体を癒すことが精一杯だったのだ。
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桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» だいぶ放置ですみません!国家資格目指してるんですね。すごいです!私も陰ながら応援しています。もう、あまり需要もないかとは思いますが私はまだまだ鬼滅の刃が好きなのでボチボ頑張って更新していこうと思います。お時間あれば、また遊びにきてくださいね。 (2022年1月10日 11時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 資格取ろうと思っているんだな!俺も国家資格を取ろうと思っている!お互い!勉強!集中!煉獄杏寿郎だ! (2021年10月31日 20時) (レス) @page50 id: e9e5935c56 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» レスと更新が遅くなって申し訳ありません(T ^ T)しばらくこのような状態が続くと思われます。忘れた頃に更新かもしれませんが、引き続き彼らの応援よろしくお願いします( ^∀^) (2021年10月31日 15時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 煉獄さん!頑張れ!俺、煉獄さんを応援します!煉獄さんは強い‥!俺は弱者じゃない!夢主さんもだ!勝手に決めつけるな!猗窩座…!!お前を絶対許さない!竈門炭治郎です!煉獄さん、夢主さん!頑張って下さい! (2021年10月10日 19時) (レス) @page46 id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» 全て言ってしまうとネタバレになってしまうので、あらかた伏せてになるのですが……^^;柱救済で物語を展開していきますので現役引退はありません!とだけ(^-^) (2021年10月4日 21時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜花 | 作成日時:2021年9月19日 10時