其の弐佰参拾参 無限列車編30 ページ33
どれくらい刀を振っただろう。
やがて断末魔が聞こえなくなり、車両の揺れも落ち着いた。
車両に絡み付くような鬼の肉塊が、それと同時に少しずつ塵となり消えていく。
鬼の頚が落とされたからだ。
(良かった……)
桜は呼吸を整え、納刀しながらヘナヘナと力が抜けたように座り込む。
乗客も、鬼に喰われることはなかったが車両の横転を完全に防ぎきることができず座席から放り出されていた。
仰向けに寝かせてあげたいけど、体が重くて今すぐには無理そうだ。
こんなに全力で戦いきったのは初めてかもしれない。
やりきった感はこれまでにないくらい感じるが、それと同じくらい疲労感もあった。
短時間に剣技を使いすぎたせいか頭もぼんやりしている。
「桜!無事か!?」
「………………煉獄さん?」
桜が虚ろな目で見上げると珍しく表情を崩した杏寿郎が慌てた様子で立っていた。
座り込む桜の姿に、血相を変えて杏寿郎は駆け寄り膝を着く。
「なんともないな?」
疲労感漂う様子以外は桜に何か変わったところはなさそうで、杏寿郎は安心したような苦笑をもらし桜の頭にそっと手を乗せ撫でた。
(よくやったな)
桜に託した車両は、横転による死者も出ていない。
鬼の犠牲者がいないのも血飛沫が飛び散っていない車内を見ればすぐに分かった。
桜なら必ずやってくれるとは思ったが、少し無理をさせてしまったか。
「君はしばらくここで休んでいろ。他の車両を確認してくる」
そう言って立ち上がろうとした杏寿郎の腕を桜が掴んだ。
「炭治郎くんたちはどうなりましたか?」
「それを含め確認してくる」
イコールそれは生死がわからないということで。
心配そうな桜の瞳がさらに揺らいだのを見て杏寿郎はしまったと思った。
桜は、あれからまだ炭治郎たちの姿を一度もみていないのだ。
それなのに、疲れきって心が不安定な彼女に消息がわからないような含みのある言い方をしてしまったら、ますます不安にさせてしまう。
「大丈夫だ。鬼の頚を斬ったのは竈門少年と猪頭少年だ。それに鬼の妹と、黄色い髪の少年も共に戦うよう指示をしてある。彼らは弱くない。無事だ」
「…………………」
「みんなまとめて連れてくるから、君はここで待つんだ。いいか?くれぐれも探しに行くんじゃないぞ」
このままだと体に鞭打ってまで探しに行きそうなので杏寿郎が強く念押しをする。
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桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» だいぶ放置ですみません!国家資格目指してるんですね。すごいです!私も陰ながら応援しています。もう、あまり需要もないかとは思いますが私はまだまだ鬼滅の刃が好きなのでボチボ頑張って更新していこうと思います。お時間あれば、また遊びにきてくださいね。 (2022年1月10日 11時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 資格取ろうと思っているんだな!俺も国家資格を取ろうと思っている!お互い!勉強!集中!煉獄杏寿郎だ! (2021年10月31日 20時) (レス) @page50 id: e9e5935c56 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» レスと更新が遅くなって申し訳ありません(T ^ T)しばらくこのような状態が続くと思われます。忘れた頃に更新かもしれませんが、引き続き彼らの応援よろしくお願いします( ^∀^) (2021年10月31日 15時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 煉獄さん!頑張れ!俺、煉獄さんを応援します!煉獄さんは強い‥!俺は弱者じゃない!夢主さんもだ!勝手に決めつけるな!猗窩座…!!お前を絶対許さない!竈門炭治郎です!煉獄さん、夢主さん!頑張って下さい! (2021年10月10日 19時) (レス) @page46 id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» 全て言ってしまうとネタバレになってしまうので、あらかた伏せてになるのですが……^^;柱救済で物語を展開していきますので現役引退はありません!とだけ(^-^) (2021年10月4日 21時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜花 | 作成日時:2021年9月19日 10時