あなたがたった一度の恋でした５【水と炎で逆ハー】

其の弐佰弐拾弐 無限列車編１９ ページ22

「っ！？」



ハッと目を見開いて桜は目を覚ました。

瞳に映っているのは青々とした空。

匂ってくる草の香り。

桜は野原に大の字で横たわっていた。

ゆっくりと上半身を起こす彼女の服装は、なぜか鬼殺の隊服ではなく、普段過ごすような浴衣を着ているのだ。

帯刀していたはずの日輪刀も腰帯にない。



(あれ？私、なにしてたんだっけ……。なにかとても大切なことをしていたような………)



頭で考えるけど、まるで脳に霧がかかったように思い出せない。









「お姉ちゃん！！」



パタパタと走って来たのは桜の妹、三葉。

振り上げた右手にはシロツメグサで作られた花冠が握られていた。



「これ！お姉ちゃんのために作ったんだ」



三葉がフワリと桜の頭に花冠を乗せた。

桜はそれに優しく触れる。



「どう？かわいいでしょ？」

「ほんとだ。とってもかわいいね。似合う？」

「お姉ちゃん美人だから似合う似合う！」



そうか、大切なことを忘れてるような気がしたのは三葉と遊んでいたことだったのかもしれない。

あまりにも、この場所が気持ちよくてうっかりと昼寝をして、変な夢を見ていたせいだ。

でも、なぜだろう。

起きた時、この風景がとても懐かしく思えた。

しばらく三葉と遊べていなかったからだろうか。



(遊べていなかった……？)



あれ？

どうして遊べてなかったんだっけ？

すっきりしたはずの脳にまた霧がかかりそうになる。






「あっちにね、たくさん咲いてるんだ。お姉ちゃんも一緒に作ろうよ」

「……………………」



だけど三葉が話しかけてくれると、すぐに霧は晴れていくんだ。

子供らしい笑顔を浮かべる三葉に桜は笑いかけた。



「うん！案内してくれる？」

「こっちだよ！」


そう言って桜の手を引いて連れて行ってくれる三葉。

そういえば、この前もこうして手を繋いで散歩をしたばかりじゃないか。

遊べていなかったなんて、どうしてそう思ったのだろう。

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