あなたがたった一度の恋でした５【水と炎で逆ハー】

其の弐佰弐拾玖 無限列車編２６ ページ29

あの日、鬼の襲撃により家族や友を突然失ったこと。

義勇と出会い鬼殺隊に入ったこと。



(忘れていてすみません、冨岡さん！)



そして、無限列車の任務に就いていたことも。

桜は自嘲気味に笑う。



(まんまと血鬼術にかかってたわけね)



覚醒と共に浴衣姿は鬼殺隊隊服へと変わり、腰帯にはきちんと日輪刀が備わっていた。



度々桜の義勇が目の前に現れ殺そうとしていたは、危機を知らせてくれていたのだ。

これは悪夢だと。




だが、これが夢だと気付けても夢から覚める術を桜は知らない。

夢だということを義勇は幻影になってまで教えてくれたのだ。

あとは自分で方法を見つけ出さなくては。



(このまま目が覚めなければ、ずっと夢の中で生き続けることになる……………どうすれば………)



義勇のことだ、きっと夢から覚める手掛かりになることも残してくれているに違いない。

どうすればいい？どうすれば目覚めることができる？

ずっと義勇は何かを訴えて教えてくれていたのに、何も気付けなかった自分がもどかしい。



(落ち着いて……考えろ！考えるのよ。冨岡さんが現れたのには何か意味があるはず………)



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そういえば、義勇は現れると必ず頚を狙っていたような気がする。

頚を斬られれば死ぬから、必死で逃げたけど。

あれは桜に己の頚を斬って眠りから覚めろという暗示だったのではないか。

もし、夢の中で生きることが夢から覚めない原因なのであれば、夢の中で死ぬとどうなるのだろう。

怖いけど、躊躇っている時間はない。

桜は日輪刀を抜き、刃を自らの頚に当てた。

だけど……もし間違っていたら、二度と仲間に会うことができない。

その迷いから、なかなか刀を引くことができなかった。









《桜》



もう一度、桜の前に義勇が姿を見せた。

今は悲し気でも怒ってもない、俺を信じろと、大丈夫だとうっすら笑顔を浮かべていた。

方法を教えてくれたのは他の誰でもない、一番信頼している師範の義勇だ。



(私は冨岡さんを信じる！！！！)



再度、優しく名前を呼ばれ桜は決意を固め、刃を力の限り下に引いた。

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