◎敵わない ページ2
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『ねぇ、好きな人いるの?』
よく覚えてる。
今と同じ、高校2年の寒い寒い冬の日だった。
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「ねぇ、好きな人いるの?」
黒いネックウォーマーに顔を埋めた彼の言葉に、耳を疑った。
バレー部のマネージャーでもない、クラスだって違う。唯一間近で彼を見れるのは、学校帰りの駅のホームでだけ。それも、下校時間が合った時だけだ。
密かに彼を想っていた私だけれど、話したことなんてなかった、それなのに。
急に話しかけられて、私の心臓は爆発寸前。というかそもそも、本当に私に話しかけているのだろうか。
「…えっ……と…?」
「だから、好きな人いるの?」
どうやら、私に話しかけているのは確からしい。でも、待って。
『好きな人いるの?』ってどういうこと。
混乱した頭に、
もしかして彼も…なんて考えがぽん、と浮かぶ。いや、そんなはずはない。自分のいいように考えるな。きっと何かの罰ゲームかなんかだ、うん。
と勝手にひとり納得して、再び彼を見上げる。やっぱり、背が高い。
「う…うん……いる、かなぁ…?」
「……そう、」
「…………………うん」
また、重い重い沈黙が流れる。
思わず私も、マフラーに顔を埋めた。
いる、なんて言っちゃったけど
『誰?』とか聞かれたらどうすればいいの。
まさか『あなたです』なんて言えないし…あああもう私の馬鹿!!
また頭の中で自問自答を繰り返しながらおそるおそる彼を盗み見ると、
彼の視線もまた、私を捉えていた。
それはもう、真っ直ぐに。
「いしかわく……」
ブレザーのポケットに突っ込んでいた彼の手が空を切って、頭に、程よい重さ。
ぽん、と一度だけそこで弾んで、そのまま下に降りるようにするりと髪を撫でながら、
「じゃあさ、
俺と付き合ってよ」
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ぷーこ(プロフ) - あきさん» すみません、もし教えていただけるようでしたらどの作品か教えていただけると幸いです。 (2016年8月9日 18時) (レス) id: 0bb9c9012b (このIDを非表示/違反報告)
ぷーこ(プロフ) - あきさん» わざわざ コメントありがとうございます。それはそちらの作品と私の作品どちらが先に書かれたものでしょうか?お手数をおかけしますが教えていただけると嬉しいです。すみません。 (2016年8月9日 18時) (レス) id: 0bb9c9012b (このIDを非表示/違反報告)
あき - はじめまして、コメント失礼します。とある作品を読んでいたところ、この作品のあるお話と酷似しているものを見つけまして、一応ご報告をと思いコメントさせて頂きました。 (2016年8月9日 8時) (レス) id: 7970285b3f (このIDを非表示/違反報告)
ぬんぬん♪ - えっ終わり!?嘘やろ!?!? (2016年6月11日 0時) (レス) id: f5deb9fb59 (このIDを非表示/違反報告)
藍 - 完結……したのですか? 楽しみに見させていただいてたので残念です…… (2016年5月22日 23時) (レス) id: 191aa71f46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぷーこ | 作成日時:2016年1月5日 20時