Episode:135 ページ39
Side:樹
“前に進みたい”
そう思った。
「近くで待ってるから、大丈夫だよ。」
「うん。」
「いつでも連絡していいからね。」
「うん。」
「樹!顔上げて、胸張る!」
「わかってるよ!バイバイ。」
学校の近くで、Aとバイバイ。
ここに来たのは、転校手続きをしに来た時以来。
今日で2回目。
授業のある教室を確認して、その場所に向かう。
“大丈夫、大丈夫って思ってれば、大丈夫だよ”
昨日の夜、北斗がそんなことを言ってた。
大丈夫、大丈夫か…。
何かあったら、すぐに教室を出られるように、廊下側の一番後ろの席に座った。
北斗どう?ちゃんとやってる?
休み時間に、北斗からメールが来てた。
ちゃんとやってるっつーの。
「ねぇ、xx中の樹くんだよね?」
え?
「はい…?」
「やっぱそうだ。ウチもxx中だったの。あ、学年は1コ上だけど。」
ここには、知ってる人はいないと思ってた…。
「知り合い?」
「同中の子。1コ下で、双子でイケメンって、超有名だったよ。」
誰…だろう…?
俺が双子ってことも知ってる。
この人…どこまで…?
「じゅりって名前なの?」
「はい…。」
その人の友達にも話しかけられた。
「男の子で、じゅりってなんかカッコイイ!」
「ねー、カッコイイよね!双子の子もカッコイイ名前だったよね?なんだっけ?」
早く…
この場から居なくなりたい…。
「あ、思い出した!北斗!北斗だよね?」
「はい…。」
もういいっしょ?
早く解放してほしい…
「確か、卒業する少し前に事故あったよね?うちらの代でも、めっちゃ噂になってたよ。北斗くん元気?」
ほら、やっぱり…
絶対聞かれると思った…。
「ねぇ、聞いてる?」
「北斗…」
事故…
“キキーッ!!”
“樹、危ないっ!!”
「っつ…はぁっ…」
“樹、はんぶんこだろ?”
“逃げんなよ、樹!”
そうだ…
俺はもう…逃げない。
「ねぇ、大丈夫?聞いてる?」
「あ、あぁ…。元気…だよ。でも北斗、事故の後遺症で歩けなくなった。」
これが正解かは、わからないけど…
「あ、なんか、ごめんね。」
なんで謝るんだろ?
「別に…」
謝る必要なんてないのに。
「い、行こっか。樹くん、またね。」
あの人は誰だろう?
全っ然、思い出せない。
「うっ…」
近くにあったトイレに駆け込んだ。
「げほっ…ぉえっ…」
やっぱ来なきゃ良かった。
Aにメールを送った。
今日はもう帰ろう。
A、ごめんね。
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作者名:浅緋 | 作成日時:2021年10月2日 22時