Episode:133 ページ37
「バス…来たよ…。」
いつもの時間にバスが来る。
「じゃあね…、バイバイ…」
「いってらっしゃい。」
スクールバスに乗り込んだ北斗を見送る。
今日1日、元気に過ごせますように…。
あの事故の日から、もうすぐ1年。
進んでは戻り、戻っては進む。
ずっとそんなかんじだった。
樹や北斗の
私が“元の生活”に戻りたくて、2人に無理させてたりするのかもしれない…。
時々、そんな風に思う。
今日は樹も調子が悪そうだし…。
こんな日は、すごく両親に会いたくなる。
パパとママなら、なんて言うかな?
身体の自由を奪われた北斗に、なんて言ってあげるだろう…?
悪夢を見て、夜も眠れない樹に、どんな言葉を掛けるだろう…?
私は、どうすればいいんだろう…?
教えてほしい…。
*
「ただいまー。」
「おかえりー。」
あれ?樹、起きてる。
「起きれた?」
「うん、大丈夫。」
最近の樹は落ち着いてる日が多いけど、またふとした瞬間に崩れるんじゃないかって、心配になる。
「なんか食べる?」
「んー…食べたくない…。」
やっぱり…。
なんとなく、今日の樹は“なにも食べたくない”って言いそうだと思った。
「じゃあ、これ飲む?イチゴヨーグルト。」
帰り道にあるコンビニに寄って…
樹が食べてくれそうなものを、いくつか買った。
「それはほしい。」
「はい、どうぞ。」
今日の朝ごはんは、イチゴヨーグルトでいいね。
「あのさ…」
「うん。」
「学校…、行こうかな…。」
「え?」
樹、今なんて言った?
「スクーリング…あるんだって。」
樹がスマホを見せてくれた。
「いつ?…来週から?」
「北斗も頑張ってるから、俺も頑張りたい。」
これ、昔から変わらないね。
お互い、切磋琢磨しながら成長してきた、うちの双子。
「でさ、Aにお願いがあるんだけど…」
「なに?」
「一緒に来て欲しい。学校の近くまででいいから。」
もちろん、樹の気持ちを尊重しよう。
「いいよ、一緒に行くよ。」
「ありがと。」
嬉しそうな樹の顔。
「教室まで行けばいいの?」
「学校の近くまでって、言ってんじゃん。」
「あー残念。」
どう頑張っても、樹の単位は足りないから、進級はできない。
でも、樹が決めたんだから、とことん付き合うよ。
「どんだけ過保護なんだよ?」
「過保護にさせたんでしょうが…。」
少しずつ…
少しずつ、前に進めばいい。
これでいいんだよね?
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作者名:浅緋 | 作成日時:2021年10月2日 22時