Smile Again【3】 (ページ25)

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Episode：121 ページ25

Side：樹

不安がないわけじゃない。

でも、北斗も一緒だから、大丈夫だって自分に言い聞かせた。

俺がしっかりしなきゃ、誰が北斗のサポートすんだよって。

「北斗ー、いつ退院してきたの？」

いつも３人で歩いてた道を歩く。

「１ヶ月くらい前だよ。」

「もう慣れた？」

「なにが？」

「それ。」

ジェシーが北斗の車椅子を指差した。

「んー…慣れた…かな？」

そんなこと率直に聞けるジェシーがうらやましい。

「北斗、ここ段差。手伝うよ。」

「大丈夫、大丈夫。」

「でもさー…」

「ジェシーいいから、見ててやって。」

このくらいの段差なら、北斗は自分で越えられる。

「いけんの？マジで？」

「あぁ、うん。大丈夫。」

どうやったら出来んのか、俺にもよくわかんないけど、車椅子は北斗の体の一部になった。

「なーんだ、北斗なんでもできんじゃん。」

「急になんだよ？」

「俺さ、お前らの幼なじみで親友じゃん？」

「まぁ、そうだね。」

「すげー心配してたんだよ。樹も北斗も全然会ってくんないし。」

ジェシーが、何度も来てくれてたのは、もちろん知ってた。

「だから、北斗が帰ってきたら、絶対会いに行こうって決めてたんだよ。」

ジェシーはそんな奴じゃないって、わかってても会えなかった。

「なぁ、樹。お前もだよ。」

「なにが？」

「んな顔してんなって。お前を困らすために誘ったんじゃない。」

「え？」

「前みたいに、普通に話したりとかしたかっただけだし。」

“前みたいに”か…

「ジェシー、俺はもう前とは違うよ？」

北斗の言う通り、もう前とは違う。

「北斗が車椅子とか、俺には関係ないね。」

「は？」

「だって、北斗は北斗じゃん。」

ジェシーは、いつでも真っ直ぐだ。

「っくしゅん！」

「北斗？寒い？」

結構着込んで来たけど、この寒さじゃ北斗の体温はどんどん奪われる。

「とりあえず、フード被っとけ。」

北斗にフードを被せる。

「ジェシー、ウチ来る？」

「いいの？」

「寒いし、北斗風邪引いたら大変だからさ。」

久しぶりに友達をウチに誘った。

事故の前までは、ジェシーがウチに来るのが当たり前だった。

「ジェシーくん、ゴハン食べてくよね？」

Aは、“それが当たり前”みたいな顔して、ジェシーをゴハンに誘った。

久しぶりに家族以外の誰かと、ゴハンを食べた。

「なんで、お前いんの？」

「お姉ちゃんが誘ってくれた！」

優吾は、ちょっとビックリしてたけど…

なんか、楽しかった。