Episode：120 ページ24
“一緒に来て…”
って言われたから、そのまま部屋までついてきたけど、なんだろう？
「手伝ってほしい。」
「なにを？」
普通に服を着込むくらいなら、自分で出来るのに。
「レッグバッグにしていく。」
「え？」
“手伝ってほしい”
って、そう言うこと？
「ジェシーさっき、いつもの公園行こうって。」
「うん、言ってたね。」
「そこさ。車椅子用のトイレないんだよ。今から出たら、次の時間までに帰ってこれるか、わからないし…」
なるほどね。
今の北斗に、常につきまとうのが、この問題。
入院中もそうだったけど、北斗くらいの年だと、なかなか難しいね。
「樹もいるから、いつもみたいにしたら？」
北斗は、私たちと出かける時は、絶対にこんな事は言わない。
出掛けた先に、多目的トイレがなくても、時間に間に合わなくても、“他の方法”があるのを知ってるから。
「じゃあ、行かない。やめる…。」
北斗が自分の口で、“自分はこうだ”って言えたらいいんだけど…
それは時間を掛けて、少しずつ慣らして行くしかないか…
「わかった。レッグバッグにするから、行っておいで。」
せっかく、“外に出よう”って思ったんだから、北斗のその気持ちを尊重しよう。
カテーテルをレッグバッグに繋いで、北斗の右足に固定する。
裾から見えないように、レッグウォーマーで目隠しをして、これで完璧。
「どう？気持ち悪くない？」
「うん、へーき。」
これで、少しは安心かな？
北斗が不安なく、外に出られればそれでいい。
「樹ー、ちょっと来てー。」
玄関にいた樹を呼び寄せる。
「なに？」
「北斗、レッグバッグにしたから、気を付けて見ててあげて。」
突然方法を変えたから、体がビックリするかもしれないし、何かの拍子にカテーテルが流れなくなるかもしれない。
「わかった。ちゃんと見とく。」
「お願いね。」
「あと、あれっしょ？外寒いから、北斗の体温が下がり過ぎないように要注意っしょ？」
樹もだいぶ北斗の体について、理解が出来てきたみたい。
「うん、そう。」
でも、樹自身も気を付けないといけないことがあるんだよね。
「北斗…」
「なに？」
それは北斗の方にお願いをしておこう。
「もしだよ、樹の発作が出たら、すぐに連絡してね。」
「うん、わかった。」
「よし、じゃあ、気を付けて。いってらっしゃい。」
ちょっと不安気な顔してる２人を送り出す。
２人一緒だから、大丈夫だよ…。
２人の背中に、そう語りかけた。
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作者名：浅緋
| 作成日時：2021年10月2日 22時
