Episode:114 ページ18
すべて順調だと思ってた。
順調だと過信してた…。
「ねぇA、聞いてた?」
「えっ?ごめん、なに?」
今朝から本調子じゃない。
なんか、ボーッとする。
「なに、ボーっとしてんだよ?まさか具合悪い?」
きっと寝不足が続いているからだと思った。
「平気、平気。ごめん…もう一回…言っ…」
視界が歪んだように見えた。
*****
誰か泣いてる…。
どうして泣いてるの?
“おいていかないでよ…。”
おいていかないよ…
泣かないで、大丈夫だから…
“みんないなくなっちゃうよ…。”
樹…泣かないで、どこにも行かないから…。
*
あれ?ここ、どこ…?
見慣れない天井が視界に入った。
「A…!A…!」
「じゅり?…っ!」
慌てて起き上がろうとして、酷い眩暈に襲われた。
「まだ起きちゃダメだって!」
樹に強引にベッドに押し付けられた。
「A、いきなり倒れた…。」
あぁ、そうか…
私、倒れたんだっけ…?
点滴されてるし…
ここは病院だ…。
でも…
「ここまで、どうやって?」
「優吾が救急車呼んで…それで…」
「樹が付き添ってくれたの?」
「うん、そう…。」
救急車のサイレンだって、樹にとっては苦痛なのに…。
それでも一人で付き添ってくれたんだ…。
「A、風邪と軽い過労だって。」
気を付けてたつもりだったのに…。
そのままナースコールを押した。
「気が付きました?」
すぐに来てくれた看護師さん。
「はい。もう帰ります。点滴、抜いてください。」
「それは出来ません。終わるまでは帰れません。」
これ、あと何時間掛かるの?
「でも、介護が必要な家族がいるんです。」
帰らなきゃ、誰が北斗の…
「だったら尚更、弟さんの為にも、この点滴だけは最後まで受けてください。」
そう言って、看護師さんは樹の方へ視線を向けた。
あの顔は泣いた顔だ。
「樹…ごめんね。不安だったよね?」
そっと手を伸ばして、樹の手を握った。
「心配…かけんな…。」
「ごめん…。」
「優吾に電話してくるから、寝てて…。」
「樹!」
「なに?」
「北斗には、過労だって言わないで。」
「わかった…。」
私、何してるんだろう…?
体は物凄く正直で…樹が戻って来るまでの数分でまた眠って…。
それから、どのくらい経っただろう…?
点滴が終わったって起こされた。
優吾が迎えに来てくれて、家に着いて…
「今日は休んで。」
って、優吾に言われて、吸い込まれるようにベッドに入った。
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作者名:浅緋 | 作成日時:2021年10月2日 22時