Episode:110 ページ14
Side:北斗
樹が車椅子を押してくれて、リビングに到着。
この時点で、起きてから20分以上経ってる。
「樹、北斗、おはよう!」
「おにぃ、おはよう。」
なんか安心する、おにぃの笑顔。
「なんでニヤニヤしてんだよ?」
「し、してないよっ!」
と言いつつ、たぶんニヤニヤしてる。
だって…
昨日までとは、全然違うから。
“おはよう”の、たった一言だって、そう。
「優吾だって、ニヤニヤしてんじゃん。うわっ、気持ちわる〜。」
「樹!てめぇ、ぶっとばすぞ?」
すぐにケンカになりそうな、おにぃと樹のやり取りも…
「北斗ー、助けて!」
「えっ?」
事故に遭う前と全然変わらない樹も…
「はいはい、もう朝からうるさいって。」
姉ちゃんの小言も…。
全部が全部、なんか嬉しい。
「おにぃ、今日学校?」
「あぁ、そうだよ。」
「間に合うの?」
まだ平気なのかな?
「間に合うから、大丈夫。ほら、樹がバイクの鍵返してくれたからさ。」
そう言って、おにぃは目の前にバイクの鍵をかざした。
「俺に感謝だな、優吾。」
樹って、俺の前だと結構兄貴っぽいけど、おにぃの前だと、やっぱり弟で…
「あーそうだな!!」
おにぃもそれをわかってるから、こんな風に言ってるけど、俺も樹もおにぃに殴られたりしたことは一回もない。
「ふふっ…。」
なんか、面白い。
「ほら、喋ってないでいいから、朝ゴハン食べるよ。樹は?あとでにする?」
「…頑張る。」
「“頑張る”って、なに?」
朝ゴハンを頑張るってなんだろう?
「いつもより時間早いから。」
「そっか。」
「じゃあ、俺はそろそろ行くわ。」
おにぃはそろそろ行く時間…。
「優吾、バイク気を付けてよ!」
「大丈夫、大丈夫。」
「北斗、じゃあな。夕方には帰るからな。」
「うん、気を付けてね。いってらっしゃい。」
“いってらっしゃい”
なんて、いつぶりに言っただろう…?
「北斗、準備できた?」
「うん。いただきます。」
家での朝ごはんも、当たり前だけど、すごく久しぶり。
姉ちゃんとおにぃが作ってくれた昨日のゴハンも、すごく美味しかった。
「それ、優吾が作ったんだよ。北斗喜ぶかなぁ?って。」
「マジ?めっちゃ美味しい。」
「優吾にちゃんと伝えてあげなね。優吾喜ぶよ。」
「あとでメールしとく。」
やっぱり、家っていいな。
帰って来る前は、不安だったけど…
やっぱり帰って来れて良かった。
みんなと一緒ってだけで…
それだけで…すごく嬉しい。
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作者名:浅緋 | 作成日時:2021年10月2日 22時