Smile Again【2】 (ページ7)

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Episode：55 ページ7

Side：樹

北斗は前までの北斗じゃない。

北斗を“そんな風”にしたのは、誰でもなく俺。

北斗のことをちゃんと知って、ちゃんと守ってやらなきゃ。

それが、俺の…“兄貴”としての責任だから。

北斗の服を選んでいるうちに、いつの間にかキャップコーナーに辿り着いた。

これ、優吾に似合いそう。

優吾が俺にくれたやつと似たデザインのキャップ。

「樹も新しいキャップ買う？」

「ううん。俺のじゃない。」

俺のは、これ１コあればいい。

「優吾の…」

「優吾？」

「うん、そう。これもらっちゃったし。」

「それをプレゼントにしたらいいんじゃない？」

「こんなんでいいのかな？」

「樹から貰ったってことが大事なんだよ。樹が自分の気持ちで、優吾にあげたいって思ったんでしょ？」

「優吾、いつも俺の面倒見てくれるし。」

「なら、いいじゃん。優吾に、いつもありがとうって。」

「うん、そうする。」

今日の買い物の目的のもう１つは、優吾へのプレゼントを選ぶこと。

今日は優吾の誕生日。

サプライズでパーティーしようって、Aが言った。

だから、今日は優吾が寝坊しても、Aは怒らなかった。

“誕生日くらいは、ゆっくり寝かせてあげよう”って。

優吾はマジ優しい。

いつも俺のそばにいてくれる。

いつも笑ってて、今までそんな風に思ったことなかったけど、やっぱり優吾は兄ちゃんで、俺、優吾のこと好きだなって。

いつも笑ってる優吾だけど、俺が腕を切った時は、すごく悲しそうな顔するんだ。

“樹、自分を大事にしろよ…”

って、優吾自身が痛いみたいな顔する。

優吾の悲しそうな顔見たくないから、ホントはやめたいけど…

でも…

まだ苦しくて、心が痛いから。

「…り…樹…。」

「え？なに？」

「大丈夫？具合悪い？」

「ううん、へーき。」

「我慢してないよね？」

「してないよ。」

「もういい？」

「うん、もういい。Aは？優吾のプレゼント決めた？」

「うん、これにする。」

Aが選んだのは、優吾に似合いそうなチェックのシャツ。

「よし、じゃあここは終わりにして、次のところに行こうか。」

パパとママが言ってた。

“どんなに辛くても、お姉ちゃんたちと一緒にいれば、大丈夫。”

“みんな樹の味方でいてくれる。”

って。

俺、姉ちゃんみたいに強くないし、兄ちゃんみたいに優しくもない。

けど…

やっぱり、みんなで一緒にいたい。

パパとママには、すごく会いたいけど…

それは今じゃない…。