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Episode:83 ページ35

Side:樹

「書類もらって来るから、ちょっと待ってて。」

Aは定期的に病院から書類をもらってる。

前に聞いたら、事故を起こしたバス会社が北斗の入院費用を負担してくれるから、その為の書類だって言ってた。

「わかった。さっき買ったの食べてていい?」

ここに来る前にコンビニに寄って、お菓子とかジュースを買った。

病院って、案外やることないから…。

「うん、いいよ。ジュースも北斗とケンカしないで分けて。」

「しねーよ。」

Aは、俺や北斗のこと、まだ小学生とか思ってんのかな?

ベッドテーブルにお菓子とかジュースとか並べる。

「樹、学校は?」

いつかは聞かれると思ってた。

「今日、普通の日だよ?」

「あぁ…うん…。」

北斗の視線が俺を捉えた。

「行けない…。やっぱ無理…。」

高校には1回も行ってない。

入学式にも行けなかった。

「姉ちゃん、何て言ってた?」

「無理しなくていいって。」

「それでいいの?」

それでいいとは思ってない…。

「樹、学校行けない自分も嫌なんでしょ?」

北斗には何でもわかってしまう。

「やだよ。こんな自分…。」

「中途半端なの嫌いだもんな、樹は…。」

「でも、北斗と同じ学校じゃなきゃ意味ない。」

「それはさ、もうどうにもできないじゃん。俺と樹は、もう同じじゃない。」

「そんな風に言うなよ!」

そんな風に言うなって…。

「樹は樹のやりたいようにやればいいじゃん。」

俺のやりたいように…

って、なんだろう…?

「北斗は?退院したら、学校どうすんの?」

「俺は退院したら、特別支援学校に行くよ。今も週2回、そこの先生が来てくれてる。」

「それでいいのかよ?」

「そこなら、“普通”の子と一緒にならなくていいから、いくらか気持ちが楽じゃん。」

北斗だって、つらいはずなのに…

「別にみんなと同じじゃなくていいじゃん。って、俺が偉そうに言えることじゃないか。」

けど、北斗はちゃんと前向いてると思った。

「樹、別の学校でもいいし、辞めてもいいんだよ。樹のこと、ちゃんとわかってくれる場所はちゃんとあるから。」

“俺は樹の味方だから”

って、北斗は言ってくれた。

「樹、つらい時は、“はんぶんこ”だろ。」

同じ日に生まれて…

同じ日に事故に遭って…

同じように事故で両親を亡くした、俺の片割れ。

「樹ー…これ、フタ開けて。」

ペットボトルのフタを開けて、北斗に返す。

北斗の出来ない事は、俺が全部やってやる。

それでいい…。

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作者名:浅緋 | 作成日時:2021年8月20日 23時

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