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Episode:82 ページ34

「照先生があとで来るって。」

「なにかあった?」

「俺の車椅子をそろそろ作るからって。」

「何時に来るって?」

「わかんない。」

自分の車椅子を作る=退院が見えて来た。

もうそんな時期になったんだ。

「そこにカタログある。樹、それ取って。」

「これ?」

「うん、そう。ありがと。」

「樹、なにしてるの?」

樹は、ベッドの横に置いてあるパイプ椅子を運んで北斗の横に置いた。

「俺も一緒に見たい。いい?」

「いいよ。」

久しぶりに2人が並んで座ってるのを見た。

「じゃあ、俺がめくっていい?」

「うん、自分じゃめくれないから、樹お願い。」

「わかった。」

こうやって自然と北斗の出来ない事を補っていくようになるのかな。

「やっぱ黒一色がカッコいいよなぁ。」

「フレームは青が良くない?」

「いやいや、やっぱ黒だって。」

2人であれがいいとか、こっちはどうとか言いながら、カタログを次々とめくっていく。

“コンコン”

「失礼します。おっ、来てたか。」

意外と早く来たね。

「ついさっきね。」

「北斗、どうだ?」

「なんか、いっぱいありすぎてわかんないや。」

「これから北斗の体の一部になるものだから、しっかり考えた方がいいぞ。」

照の言う通り、体に合わないものを使い続けると、褥瘡(じょくそう)ができたり、内臓に負担がかかったりする。

「照、北斗の車椅子2台でお願いしたいんだけど。」

「それを聞こうと思ってたんだけど、やっぱ2台の方がいいか。」

「うん。」

「2台?どうして?」

「外用と室内用。1台でもいいと思ってたけど、北斗が自分でタイヤ拭いたり、カバー掛けたり出来ないでしょ?だから、2台。」

「なるほど。姉ちゃんはどんなのがいいと思う?」

「今、借りてるのと同じメーカーの物がいいんじゃない?カタログ見せて。」

樹からカタログを受け取って、そのページを開く。

「ここに載ってるのが、今北斗が座ってるのと同じメーカーだよ。」

そのまま樹に渡すと、さっきと同じように2人でカタログを見始めた。

「双子って、おもしろいな。」

そんな2人を見ていた照が呟いた。

「そう?」

「仕草とかが同じで見てて飽きない。」

「似てるとこ、あんまりないんだけどね。」

言われても双子だって信じない人もいるくらい。

「北斗の顔、リハビリの時と全然違うしな。」

「そうなの?」

「やっぱ兄貴と一緒がいいんだよ。」

“早く帰してやりたいな”

独り言みたいに照が言った。

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作者名:浅緋 | 作成日時:2021年8月20日 23時

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