Smile Again【2】 (ページ32)

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Episode：80 ページ32

Side：北斗

俺のリハビリには２人の先生がいる。

一人は照先生。

照先生は、車椅子の動かし方とか、ベッドへの移乗とか、筋トレとか、大きい動作を教えてくれる、ＰＴと呼ばれる先生。

もう一人は、身の回りの日常動作を教えてくれるＯＴと呼ばれる先生。

うちの姉ちゃんも、こっちのリハビリを専門とするＯＴの先生なんだって。

食事、着替え、お風呂、トイレ…

ホントに日常的な動作全部。

“工夫すれば、なんでもできるようになるよ”

って、姉ちゃんがめちゃくちゃ言いまくるから、最近はホントにそうなんじゃないかって、思い始めてきた。

俺がずっと悩んでた、自己導尿問題もそう。

今回、姉ちゃんのアドバイスもあって、“膀胱ろう造設”って、手術を受けた。

傷が落ち着いたから、今日からはその練習。

でも、今のＯＴの先生がこの方法を試した人の担当をしたことなくて、ちょっと恥ずかしいけど、姉ちゃんと練習することになった。

というか、ＯＴの先生の実習のために俺が使われることになった。

こんな体でも、誰かの役に立つんだなって思った。

「樹は？１人で留守番、平気なの？」

姉ちゃん、毎日来てくれるけど、樹は大丈夫なのかな？

「今日は優吾がいるから大丈夫だよ。樹、会いたかった？」

「べ、べつに…」

調子のいい日は、樹も来てくれるようになった。

樹と話してる時は、ちょっとだけ体のことを忘れられた。

「素直じゃないなぁ、北斗くんは…」

「なんだよ、それ？もうすぐ先生来るよ。」

「そろそろだね。北斗、今日はよろしくね。」

「よろしくお願いします。」

「北斗君、よろしくね。」

時間通りに先生が来て、練習が始まる。

「じゃあ、さっそく始めましょう。」

恥ずかしいと思ったのは、ほんの最初だけで、案外すぐに慣れた。

「ここに指を引っ掛けて、このキャップを開ける。どう？できるかな？」

姉ちゃんは、俺に動作の練習を促しながら、ＯＴの先生にも、どうやってその動作をさせるかの説明をしてた。

「時間でするのか、体のサインでするのか、それは普通の導尿と変わらないから、その患者さんに合ったやり方をアドバイスしてあげてください。あとは…」

初めて、仕事モードの姉ちゃんを見た。

普段見てる姉ちゃんとは、違う顔してた。

「北斗は本人の希望もあるし、まずは時間で決めてやろうね。」

「うん。」

もっと早く、素直に姉ちゃんに相談すれば良かった。

なんて、今更だけど…

俺の気持ちは、だいぶ楽になった。