Smile Again【2】 (ページ31)

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Episode：79 ページ31

Side：北斗

気持ちばかり焦って、やっぱり失敗を繰り返す。

“焦るな”って、照先生から何度も言われたけど、どうしても自分で出来るようになりたかった。

結局、それが悪い方向に行って、感染症で何日も高熱が続いた。

治療の為にリハビリは一旦、中断して、事故に遭ったばかりの時みたいに、ほぼ寝たきりの生活になった。

俺、なにやってんだろう？

また自己嫌悪になった。

「北斗、大事な話をしよう。」

熱が下がって、何日か経った頃、姉ちゃんがいきなりそう切り出した。

いつもより真剣な姉ちゃんの顔だった。

「なに？」

大事な話ってなに？

「手首、動かしてみて。まず左から。」

「こう？」

よくわからないけど、言われた通りする。

「うん、そう。じゃあ、右も動かしてみて。」

「あんま動かない…」

「そうだね。右手の方が麻痺が強く出てるね。」

左手の半分くらいしか動かすことができない右手。

それでも、道具を使って、一人でゴハンは食べられるようになった。

「もうこれ以上は、良くならない？」

「もうすぐ半年だよね。ここが限界かもしれないな。」

こういう時、うちの姉ちゃんは絶対に嘘はつかない。

残酷だと思われるけど、“俺のため”に本当のことを言ってくれる。

「北斗がカテーテル上手く出来ないのも、右手の麻痺のせいだと思うんだよね。」

利き手の方が麻痺が強く出てる。

まぁここまで動かないと、どっちが利き手とかも関係ないのかもしれないけど…。

「今から左手で練習してもいいけど、それもきっと負担になると思うから、別の方法にしない？」

「どんな方法？」

姉ちゃんが写真とか絵を見せて説明してくれた。

「大切なことだから、よーく考えてほしい。」

別の方法は、手術をして、お腹に穴を開ける。

「手術…難しい？」

「難しくないよ。部分麻酔だし、処置室で終わるよ。」

幸い俺は、手術後の痛みは感じない。

「この方法なら、北斗の右手の可動域でも、自分で出来るようになるよ。それから、尿路感染のリスクも無くなる。」

「わかった。考えてみる。」

姉ちゃんが提案してくれた方法なら、ちゃんとできるようになるって思った。

今のまま、カテーテルを刺しっぱなしでもいいけど、車椅子に大きな採尿バックを下げなきゃいけないし、それはそれで何となく受け入れられない。

感染リスクが無くなるのは、純粋に嬉しい。

照先生にも相談したりして、３日間考えて、手術を受けることにした。

へその下に、穴が開いた。