Episode:73 ページ25
Side:優吾
「樹…ごめん…。ごめんな…。」
静かな空間に北斗の涙声だけが響く。
「北斗、樹がなんであんなに怒ったか、わかったか?」
「うん…。」
「こっち向け北斗。ちゃんと話をしよう。」
ちゃんと、北斗の気持ちも聞いてやらなきゃ。
「なんでこんなことした?」
「・・・・・。」
「北斗、ちゃんと言えよ。そしたら全部受け止めるから。」
「みんなに迷惑かけたくなかった…。」
「またそれかよ?お前、マジでそんなこと思ってんのかよ?」
「だって、そうじゃん。これわかる?こんなことすら出来ないんだよ?」
北斗の体に繋がる1本の管。
それのせいで、北斗のメンタルがやられてるって、姉貴から聞いてた。
気持ちはわかるけど…
「だからなんだよ?たかが、そんなことで…」
「そんなことっていうなよ!」
北斗にとっては、“そんなこと”じゃないのもわかってる。
けど…
「たいしたことねぇよ。」
死にたくなるほど、悩むことじゃねぇんだよ。
「迷惑…じゃない…。北斗は…迷惑なんかじゃない。」
「樹?」
いつから起きてたんだ?
「俺、北斗がいなくなるのヤダよ…。」
俺だって嫌だ。
これ以上、誰も失いたくない。
「許してほしいなんて…言えない…。」
「は?」
「みんなから両親を奪ったのは俺だから…」
北斗、なに言ってんだよ?
「あの日、出掛ける時間に友達から連絡が来て…無視すれば良かったのに…そのせいで、出掛ける時間が遅れて…、予定通りに出掛けてれば、事故には遭わなかったかもしれないのに…。」
ったく、樹も北斗も結局はそればっか。
マジでうぜぇ。
「お前ら、いい加減にしろよ!」
「優吾、怒鳴らないで。」
「そんなに自分たちのせいにしたいのかよ?自分たちを責めて、それで満足か?」
そんなことしたって、何の意味もない。
「樹、お前はどうだ?それでお前の病気治んのかよ?」
「・・・・・。」
「北斗は?ずっとそうやって、自分の殻に閉じこもるつもりかよ?」
「・・・・・。」
「お前ら、マジでうぜぇよ。」
“誰か”を責めることで満足するなら…
それで、こいつらの気が済むなら…
「だったら、俺を責めればいいだろ?あの日、みんなで集まろうって言ったのも、雪なのにやめなかったのも俺だぞ?」
元を正せば、“俺のせい”なんだよ。
「お前のせいで、両親が死んだって言えばいいだろ!?」
2人がそれで満足するなら、俺を責めればいい。
弟たちに責められようが、別になんともない。
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作者名:浅緋 | 作成日時:2021年8月20日 23時