Smile Again【2】 (ページ12)

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Episode：60 ページ12

「樹、どうして、そんなに嫌なの？」

ここで勝手に決めたら、また樹は自分の殻に閉じこもると思う…。

「だって、さみしいじゃん！いなくなっちゃうのやだ。」

樹が和室で寝る本当の理由がわかった気がした。

ここにいれば、いつもパパとママを感じることができるんだ。

「お墓…遠くて行けないじゃん…。車乗れなきゃ無理じゃん。」

「樹、よく聞いて…。」

樹の両手を握った。

「今は行けないかもしれない。それは樹だけじゃない、私もそう。けど、樹の体が良くなったら、いつでも行けるようになるよ？」

「・・・・・。」

「北斗が帰って来て、樹の体が良くなったら、いつでも連れて行ってあげるから。」

「ホント？」

「うん、約束する。だから今は寂しくても、少しだけ我慢しよう。」

「うん…。」

*

「なんか、樹に悪いことしちゃったみたいね。」

「おばあちゃんのせいじゃないよ。」

「樹、いい加減泣き止めよ。」

和室で膝を抱える樹のすすり泣く声が聞こえる。

気持ちを整理してるんだと思いたい…。

「…ｸﾞｽｯ…っはぁっ…」

「樹、苦しくなんぞ。」

樹の気持ちもわかるんだけど、こればっかりは仕方ない。

「どうすんのこれ？」

久しぶりに優吾もお手上げ。

「顔上げて、樹…。」

涙に濡れた樹の目。

まだまだ幼い顔。

４人の中で、一番甘えん坊で、パパとママのことが大好きなんだよね。

「樹が泣いてばっかいたら、パパとママが心配するよ。樹は強い子なのに…って。」

「強くなんか…ないっ…。」

樹の首に、指輪が２つ付いたネックレスをかけた。

「これ…なに？」

「パパとママの指輪。いつもしてたでしょ？」

あの日、病院で遺品として預かった。

パパとママがずっと一緒に、迷わず天国に行けるようにって、２つ一緒に通しておいた。

「パパとママは、いつも樹のそばにいる。樹の心の中にいつも一緒にいるよ。」

それを樹に託すのは、気休め程度にしかならないかもしれない。

だけど、この状況を打破するには、これしかないと思った。

樹が前に進むために…

パパとママが好きだった、強い子になるために…。

「じいちゃん、ばあちゃん…パパとママのこと、よろしくね…。」

「ちゃんと預かるわね。樹が元気になったら、おばあちゃんも一緒に行くから。連絡ちょうだいね。」

「わかった…。」

「樹、パパとママにバイバイしよう。」

「北斗が帰ってきたら、ちゃんと会いに行くからね…。」

樹は自分に言い聞かせるみたいに言った。