Smile Again (ページ7)

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Episode：06 ページ7

霊安室を後にして、再び総合案内のあった待合室に戻る。

「優吾？」

優吾は急に立ち上がって、案内カウンターに向かって行った。

「すみません、弟がもう一人いるんですけど、ここに運ばれてないですか？」

「原石樹さんのご家族の方ですよね？こちらに来ていただいてよろしいですか？」

優吾が案内係のスタッフに声を掛けたと同時に一人の看護師が慌てた様子で駆け寄って来た。

「あ、はい。」

慌てて看護師さんの後を追った。

ここに着いてから、一度も樹のことは聞かなかった。

北斗のように手術してるのかも、両親みたいな結果になったのかも、わからないままだった。

「離せよっ！離せっ！」

処置室の中から、樹の声が聞こえた。

樹は生きてる…

そう思ったと同時に不思議な違和感を覚えた。

「傷が開いちゃうから、じっとしてないと…。」

「うるせぇな！離せって！」

「「樹！」」

「兄ちゃん、姉ちゃん、俺なんでこんなとこにいんの？」

樹…？

「樹、お前は事故に遭って、それでここに運ばれた。」

優吾にそう言われて、少し考えたような顔をした樹。

「事故？あーだから、ケガしてんだ、俺…。」

樹は事故に遭ったことを覚えていなかった。

「パパとママと北斗は？」

「北斗は今、手術中。親父とお袋は…」

優吾の声が詰まる。

「樹、パパとママは亡くなった。ほぼ即死だったんだって…。」

あっさりとこの言葉を口にした自分に正直驚いた。

「死んだ…？ウソでしょ？」

「ウソじゃない…。」

「ウソだ！ウソだー！！」

樹はまるで小さな子供みたいに、声を上げて泣いた。

「ふざけんなよ！」

そのまま手当たり次第、周りにあるものを投げ付ける。

「樹なにしてんだよ！？やめろって！」

優吾の制止も聞き入れてくれない。

「っはぁ…っはぁ…っはぁ…」

「樹、少し落ち着こう…ね？」

事故後の混乱が引き起こしていることだとは思うけど、さすがにこのままではまずい…。

「お薬入れますね。」

「お願いします。」

樹を落ち着かせるために、点滴の中に鎮静剤を入れてもらうことにした。

「やっと寝てくれた…。」

ほっとしたように優吾が呟いた。

散々、泣き喚いて暴れた樹は、漸く寝付いてくれた。

樹の目尻に光る涙の痕…。

樹のケガは、奇跡的にかすり傷と腕を数針縫った程度で済んだ。

念のために受けた精密検査の結果も異状なしで、朝になれば帰れると言われた。

この時はまだ気付かなかった。

樹の心に大きな傷が残ったことを…。