Episode：47 ページ48
Side：北斗
「北斗君、新しい病院に転院することになったよ。」
そう言われたのは、たぶん１週間くらい前。
リハビリをするために、姉ちゃんが働いてる病院に転院することが決まった。
ここでは、もうこれ以上することはないって言われた。
それもそうだ。
今の俺は、ただベッドの上に寝かされてるだけ。
１人で起き上がることも出来ない。
ただ、されるがまま…
着替えも、食事も、お風呂やトイレすらも…
リハビリすれば、出来るようになるって言うけど…
この先、この身体で、どうやって生きて行けるのかも、よくわからない。
樹に全然会ってない。
軽傷で済んだ樹は、１人で楽しくやってんだろうな。
樹だって、こんな弟がいたら、嫌だよね。
そんな風に思ったら、なんか自分が、すごく惨めになった。
別に樹が悪いわけじゃないのにね…。
「北斗、どうしてほしいの？」
心のどこかでは、わかってた…。
こんなことしてても、意味ないって。
「覚悟決めて、北斗。」
こうなったのは、誰のせいでもない、“自分のせい”だから…。
ちゃんと受け入れなきゃいけないって。
「覚悟…？」
「北斗はこれから、ずっとこの身体で生きていくの。あれだけの大事故に遭って、生きてるだけでも奇跡なんだよ…。」
事故に遭って、意識不明のまま、ここに運ばれた。
呼吸するための筋肉も麻痺して、呼吸が止まったって聞いた。
折れた箇所が、もう少し上だったら、もうこの世にいなかったかもしれない。
こんな身体でも、生きてることに意味があるかは、わからないけど…
「わかった…。」
ちゃんと覚悟決めるよ…。
だから…
「これからも俺の面倒…見てくれる？」
「当たり前じゃん。北斗、良い子だね。」
そう言って、頭をポンポンされて…
ホントは嫌じゃないのに、
「ガキ扱い…すんなよ。」
って、言っちゃった。
「１５歳なんて、まだまだ子供でしょ？」
姉ちゃんや、おにぃに比べたら、俺はまだまだ子供。
おまけに４人姉弟のワガママな末っ子。
あの日、俺のワガママで、出掛ける時間が少し遅れた。
予定通りに出掛けていれば、こんなことにはならなかったのに…。
どんなに謝っても、お父さんやお母さんが帰ってくるわけじゃない。
みんなから、大切な人を奪ってしまった。
けど…
こんなでも生きてるんだから…
生きてる意味があるんなら…
「北斗…」
「なに？」
「一緒に頑張ろう。一緒に進もう。」
もう少しだけ…
頑張ってみようって決めた。
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作者名：浅緋
| 作成日時：2021年7月21日 23時
