Episode:36 ページ37
「北斗を転院させます。」
カンファレンスルーム。
あの後、看護師さんにお願いして、北斗の主治医の先生に時間を作ってもらった。
「そうですか。北斗君の為にも、その方が良いですね。受け入れ先の病院を探しましょう。」
たいていは、そういう流れになるよね…。
「あ、いえ…、紹介状をお願いしたいんです…。」
「受け入れ先の病院は、すでにお決まりですか?」
「私の勤め先に空きがあるので、そこに。ここに来る前に話をしてきました。」
「確か、作業療法士をなさってると、仰ってましたね。どちらの病院ですか?」
「音ヶ浜総合リハビリテーション病院です。」
「なるほど…有名なリハビリ専門病院ですね。かしこまりました。すぐに紹介状の手配をします。」
「ありがとうございます。」
「今日はお時間、大丈夫ですか?大丈夫でしたら、今日中に準備させますよ。」
物分かりの良い先生で、ちょっと安心した。
「家のこともあるので、今日中にお願いします。あ、あと…」
ちょっと口に出すのを躊躇する。
「北斗の障害者手帳の申請をするので、診断書もお願いします。」
「わかりました、一緒にお渡ししますね。」
まだまだやるべきことは、たくさんある。
出来ることは、出来るうちにやってしまいたい。
“明日は何が起こるか、わからない。”
これは、本当にパパの言っていた通りだと、最近、身をもって知った。
明日になれば、また樹に付きっきりになるし、
優吾とも、もう一度ちゃんと話し合わなきゃいけない。
「では、お待ちください。またお声掛けしますので。」
「はい。よろしくお願いします。」
*
落ち着いた北斗は、泣き疲れて熟睡中。
「また、可愛い顔して寝てること…」
樹もそうだけど、寝てる顔は、まだまだあどけなくて…
2人の顔を見るたびに、
まだ15歳で、どれだけ怖い思いをしたんだろう?
って思う。
「あっ…」
さっき肘も擦りむいてたんだ。
北斗の袖に血が滲んでた。
そっと袖を捲って、さっき借りた消毒液で消毒して、ガーゼと絆創膏を貼る。
起こさないようにそっと、他にケガをしてるところがないか、確認する。
動かすことの出来ない手足は、すっかり細くなってしまった。
その腕に残る強引に点滴が抜けた痕や痣。
ベッドから落ちた拍子にぶつけてるのか、足にも痣は出来てた。
痛みを感じないって、こういうことなんだよね。
「北斗、一緒に前に進もう…。」
寝ている北斗の頭を撫でながら、そう語りかけた。
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作者名:浅緋 | 作成日時:2021年7月21日 23時