Episode：29 ページ30
次の日…
あまり寝れないまま、朝を迎えた。
「うー頭いてぇ…。」
優吾はさっきからこの繰り返し。
「優吾、大丈夫？」
空き缶をゴミ袋に放り込みながら、心配そうに優吾を見つめる樹。
優吾より、樹の方が、よっぽど大人。
昨日あんなこと言われたのに、それでも優吾の心配をしてる。
樹の腕に、また傷が増えた…。
あの後、結構大変だった。
それなのに…
「水、飲む？」
「樹、そんな奴、ほっときな。」
「でも…辛そうじゃん。」
「いいから、ほっときな！ただの二日酔いだから。」
「頼むから、デカイ声でしゃべんないで…。」
大きな声で話されたら、二日酔いには辛いかもね。
「うっ…気持ち悪っ…。」
「その辺で吐かないでよ！」
あのあと、勝手に出て行って、真夜中にこっそり帰ってきた優吾。
朝起きたら、大量のビールの空き缶と優吾がリビングに転がってた。
「うるせーな…わかってるよ。」
「自業自得だよ！」
「マジ無理…。」
勝手にしてよ！
バカ！最っ低！！
姉貴と喧嘩して、ヤケ酒で二日酔いって、どんだけ最低なの？
啖呵切ったくせに…。
「A、どこ行くの？仕事？」
そんなに不安な顔しなくても大丈夫だよ…。
やっぱり、樹の不安はそう簡単には消えないよね…。
「職場と北斗のとこ。樹も一緒に行く？」
「…いいや。優吾と待ってる。」
樹、最近北斗に会いたいって言わなくなった。
「あ、そうだ。樹、これあげる。」
「なに？あ！ピアス。Aと一緒のやつ？」
「そうだよ。耳、治ったからあげるよ。でも、それ以上増やしたらダメだよ？」
「わかった。増やしたくなったら、ちゃんと言うわ。」
樹のピアスは１個で落ち着いた。
でも、“心が痛い時”は、何度でも自分を傷付ける…。
さっそく、“新しいピアスつけよー”とか言ってる樹は、事故の前のまんまなんだけどな…。
「優吾、私が居ない間に樹に勝手なことしたら、マジでアンタとは縁切るからね。」
たぶんしないとは思うけど、一応念押し。
「しねぇよ。てか、こんなんじゃできねぇよ。」
当たり前だよ…。
お酒弱いくせに、あれだけ飲んだら、酔いつぶれるって。
「樹、優吾のこと、頼んだよ。」
「普通、逆じゃねぇの？」
今の優吾、ゲームで例えたら、レベル０だからね。
「こんなんだけど、いないよりはマシだと思うから…。」
「うん、へーき。」
「帰りは夕方過ぎになると思う。何かあったら連絡してね。」
前に進むために…。
もう迷わない…。
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作者名：浅緋
| 作成日時：2021年7月21日 23時
