Smile Again (ページ28)

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Episode：27 ページ28

事故から１ヶ月。

もうすぐ３月になろうとしていた。

「姉貴、ちょっと話があんだけど。」

いつもはバイトの時間なのに、珍しく家にいて、この言葉。

「なに？」

「いいから、ここ座って。」

「樹、お前もこっちに座れ。」

「うん…。」

テレビを見ていた樹も呼び寄せた。

「これからのことなんだけどさ…。」

そう言うと一冊のパンフレットをテーブルの上に置いた。

「“xx市立南療育センター”…？」

この施設の名前は聞いたことがあった。

「優吾、まさか…？」

「北斗をここに預けよう。」

北斗のような障害を持った子が生活する施設。

「リハビリの為に転院させようって言ってたじゃん。」

「言ったけど、そう言う意味じゃない。」

今、入院している病院は救急指定病院だから、北斗を転院させようとは考えてた。

「ここでリハビリしながら暮らせばいいじゃん。ちょっと遠いけどさ、リハビリ施設も学校もあるし、24時間完全看護だって。」

「だから、預けるの？」

「そうだよ。今の俺たちじゃ北斗とは暮らせないよ？北斗の為にも、それがいいじゃん。」

「北斗に何て言うの？“お前は手が掛かるから、施設に行け”って言うの？」

「そうだよ。今の北斗は１人じゃ何も出来ない、食事も着替えもトイレも、何から何まで誰かがやってやらなきゃじゃん。今この家で、それが出来る奴なんていないだろ？」

「まだ事故から１ヶ月だよ？北斗だって、今は何も出来ないけど、ずっと続くわけじゃないじゃん。」

「俺や姉貴が頑張れば、どうにでもなるって思ってた。だけど、よく考えてくれよ…。俺や姉貴が頑張ったって、どうにもならないことだってあんだよ。樹のことだってそうじゃん。今は俺が春休みだから、なんとかなってるけど、４月になったらどうすんの？」

優吾の言ってることは間違ってない。

今は１人に出来ない樹と、障害の残る北斗。

それは、私達がどんなに頑張っても、どうにも出来ないこと。

「俺は、北斗にどう思われたって構わない。でも決めたから…。」

“決めた”ってなに？

「早いうちに手続きしてくるから。」

「優吾、本気で言ってるの？」

「本気だよ！本気じゃなきゃ、こんなこと言わねぇよ！」

勝手に悩んで…

相談もしないで、勝手に決めて…

それが“長男の責任”ってやつなの？

そんな責任、いらない…。

「優吾…、また逃げるんだ？」

これは絶対に言ってはいけないことだって、わかってた。

でも、これ以上は黙っていられなかった…。