Episode：18 ページ19
Side：樹
最初に違和感を覚えたのは、北斗の病室で全部思い出した後。
朝、学校に行く途中にある大きな道路で、急に足が動かなくなった。
流れていく車を見てると、なんか変に気持ち悪くて…
心臓がバクバクして、うまく息ができなくなる。
けど、それは気のせいだって思ってた。
でも…
気のせいじゃなかったんだ…。
“キキーッ！！”
学校からの帰り道、急に大きな音が鳴り響いた。
「うっわ、あの車、やばくね？」
大きな音の正体は、車の急ブレーキの音だった。
その車は、そのままガードレールにぶつかった。
“ドクンッ”
“樹！危ないっ！！”
事故…？
「うっわ！ヤバイって！救急車？警察？どっち？」
あの日、事故で…
「おい、樹？大丈夫か？」
「ごめん、先…帰るわ…。」
どうやって、家まで帰って来たのか覚えてない。
家に着くまで、ずっと不安だった。
俺がいない間に、また家族の誰かがいなくなったら、どうしようって…。
「おかえり。」
「…ただいま…。」
一度、意識し始めたら、“それ”は振り払う事が出来なかった。
部屋にいても、家の中が静かだと怖くなる。
「樹？急にどうしたの？」
「別になんでもない。喉…渇いたから…。」
その度に部屋を飛び出して、Aがいるか確認して…。
樹優吾、なにしてんの?
優吾テレビ観てた
特に用事もないのに、優吾にメールしたりしてた。
ちゃんとみんながいれば安心で、また部屋に戻る。
そんな事が、ずっと続いた…。
“外に出るのが怖い…”
“一人になるのが怖い…”
そんなこと言えない。
言えるわけがない。
だって、Aや優吾に迷惑かけらんないじゃん。
北斗のことだってあるのに。
きっと気のせいだから、そのうち治るって思ってた…。
でも、気のせいなんかじゃなくて…
それはどんどん酷くなった。
もう心が限界だった。
「…っ…。」
腕から流れる血。
痛いはずなのに、痛みを感じなかった。
俺だって、気付いてほしかった。
苦しくて、助けてほしかった。
でも、言えなかった…。
俺のせいで、こうなったのに…
俺のせいで、北斗は一生歩けないのに…
北斗の方が、きっと何倍も苦しいはずだから…。
俺だけ、“助けて”なんて…
言えるわけない…。
とうとう、いつもの道路で動けなくなった。
前に進もうとしても、足が動かなくて…
どんどん苦しくなってきて…
「…たすけて…」
って、無意識のうちに言葉に出してた。
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作者名：浅緋
| 作成日時：2021年7月21日 23時
