Episode：16 ページ17
Side：樹
あの日から、心にぽっかり穴が開いたみたいになった。
よく覚えてないけど、パパとママ、俺と北斗は大きな事故に遭ったんだって。
気付いたら俺は病院に居て、腕には包帯グルグル巻きで、顔には大きな絆創膏が貼ってあった。
パパとママはあの事故で死んだ。
北斗は大きな手術をして入院中。
Aから聞いた話だと、北斗はもう二度と自分の足で歩くことは出来ないって…。
でも、俺は…？
４人で同じ車に乗って、同じ事故に遭ったはずなのに、
どうして俺だけ、軽傷だった？
「北斗…？」
事故に遭った後、最初に会った北斗は頭を固定されていて、人工呼吸器をしてた。
この１０日間で２回手術をして、人工呼吸器と頭を固定してた器具は外れた。
「ごめんね…」
寝てる北斗の顔を見てたら、無意識にそんな言葉が出た。
〜〜〜〜〜
「樹、たまには自分が悪いって認めた方がいいよ？」
「なんでお前にそんなこと言われなきゃなんねぇんだよ？」
あの日、些細なことで北斗とケンカになったんだ。
「俺は樹のためを思って言ってんの！」
「はぁ？意味わかんね。」
「意味わかんね、じゃなくてちゃんと考えろよ！」
「うるせぇな！お前なんて、俺がいなきゃ何もできねぇじゃん、いつも泣いてばっかで、勝手に優等生ぶりやがって、ふざけんなよ！」
「ふざけてんのは、そっちだろ？誰が、いつ、やってくれって頼んだよ？」
最初はいつものケンカだったけど…
そのうち、お互いヒートアップして収拾がつかなくなった。
「ケンカするなら、今日はやめるぞ。」
「ごめんなさい…。」
パパに叱られて、北斗はすぐに謝った。
「樹、北斗の言う通り、少しは自分から謝る癖をつけるんだ。」
「なんで俺ばっかり？今だって…」
「だから、それがダメなんだ。いいか、樹…。」
「うるせぇな！聞きたくねぇよ！」
「樹！いい加減にしろ！」
わかってても、“ごめんなさい”って言えなかった。
「樹、パパにごめんねして、気持ち良く出かけよう。」
もうウザいって思った。
パパもママも…
いつも優等生の北斗も…。
そんなこと思ってないのに…
ほんの一瞬だけ、“いなくなればいい”って…。
結局、パパに“ごめんね”って言えないまま出発して…
“樹！危ない！！”
って、北斗の声が聞こえたところで、意識を失った。
〜〜〜〜〜
思い出した…。
パパとママが死んだのは…
北斗がこうなったのは…
全部、俺のせいだ…
ごめんなさい…。
俺を許して…。
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作者名：浅緋
| 作成日時：2021年7月21日 23時
