Smile Again (ページ16)

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Episode：15 ページ16

事故から１０日。

北斗の意識が正常に戻り、残存機能検査の結果が出た。

ちょうど、樹も抜糸の日だったから、検査の結果を聞きに、樹と２人で病院に向かった。

優吾にも連絡したけど、休んでた分の講義のまとめとバイトで行けそうにないって返事が来た。

車で行こうとしたけど、樹がすごく嫌がったから、仕方なく電車で…。

覚えてないとは言え、車に乗る事に抵抗があるかもしれないから、無理に乗せようとは思わなかった。

ちょっと不便で、時間も掛かるけど、電車で行けない場所じゃない。

*

「はい、おしまい。傷も綺麗だね。もう抗生剤のお薬は飲まなくていいよ。それからお風呂も普通に入れるし、体育の授業も普通に受けて大丈夫だからね。」

抜糸の済んだ樹に担当の先生がそう告げた。

「ありがとうございました。」

「あ、お姉さんちょっといいですか？」

立ち上がって、診察室を出ようとすると呼び止められた。

「はい。樹、先に北斗のとこ行ってる？それともそこで待ってる？」

「先に行ってる。」

樹は、静かに診察室を後にした。

「樹君、最近どうですか？事故のこととか、口にしたりします？」

樹が出て行ったのを確認して、先生が口を開く。

「事故のことは、やはりあまり覚えてないみたいです。周りから聞くので、“事故に遭った”とは、わかっているみたいですけど、どこか他人事で…。」

「そうですか。忘れてる方がいい場合もありますよ。」

「どういうことですか？」

「１５歳ですからね。多感な時期でもありますし、体は立派に成長していても精神は案外脆いんですよ。ましてや、彼の場合はご両親も亡くなって、弟さんには後遺症が残るわけで。」

「はい…。」

「事故のことを思い出して、ＰＴＳＤになったという症例もありますので、無理に思い出さない方が、彼のためかもしれませんね。」

ＰＴＳＤ…
心的外傷後ストレス障害…

交通事故に遭った人はかかりやすいと聞いたことがある…。

「もし、なにかあったら、ここに連絡をしてください。念のため、カルテは回しておきます。」

差し出された１枚のカード。

「ありがとうございます。」

北斗の主治医との約束の時間が迫っていたから、なにも考えずにカバンの中にしまった。

*

北斗の病室の前…。

「北斗…ごめんね、ごめん…。」

中から、樹の声が聞こえた。

眠っている北斗を見つめて、何度も何度も“ごめんね”って。

泣きながら、北斗に謝る樹。

この時、ちゃんと気が付けばよかった…。