Episode：14 ページ15
Side：北斗
相変わらず、視界に入るのは真っ白な天井。
ここ数日でわかったことがある。
まず、何かで固定されているのか、首が動かせない。
首の周りに物凄い違和感がある。
それが何かを確かめたくて、触ろうとしても、手が動かないことに気が付いた。
ベッドに押し付けられたみたいな感覚。
看護師さんたちが来て、点滴を変えたり、足を動かしてるのを見るから、首から下にも体があることはわかった。
でも…
何も感じないんだ。
点滴だって、針を刺されたら痛いはずなのに。
まだ麻酔が切れてないんだと思ってた。
「原石君。」
「はい…。」
声もずっと掠れたまま。
自分の声じゃないみたいだ。
「意識ははっきりしたね。もう大丈夫だよ。」
なにが…？
なにが？大丈夫なんだろう。
俺の体、どうなってんの？
「今日は君に話がある。お姉さんも来てるけど、一緒に聞いてもらった方がいいよね？」
「はい…。」
ここに来るのは、いつも姉ちゃん。
事故に遭った日から、お父さんとお母さんを見てない。
おにぃから、“大丈夫”って聞かされただけ。
「俺の両親って、どうしてるんですか？」
「原石くん、君のご両親は…」
“あの事故で亡くなった”
「黙ってて、ごめんね…。」
姉ちゃんの目に涙が浮かんでた。
「わかった…。」
何となく、わかってた。
たぶん、そうじゃないかって…。
きっと、姉ちゃんたちも俺にどうやって言おうかって、悩んだと思う。
だから、謝って欲しくなかった。
「ここからは、原石君自身の話をしよう。君はあの事故で、首の骨が折れてしまった。今、どんな感じがする？」
どんなもなにも…
「なにもかんじない…。動かない…。」
「骨が折れて、中を通る神経も傷付いてしまった。傷付いた神経は元には戻らない。君はもう、事故の前の身体じゃない。」
何を言われているのか、わからない。
両親が亡くなったこと…
俺自身のこと…
どこか知らない国の言葉を聞いてるみたいで…
“コポッ”
喉の奥で、変な音がして…
口の中いっぱいに広がる変な味…。
「吐き…そ…。」
漸く振り絞った言葉。
「北斗！？」
「体、横に向けるからねー。」
体を横に向けられたけど、それが自分の体じゃないみたいで、余計に気持ち悪くなった。
「っうぇっ！！」
用意された容器には、上手に吐けなくて…
「はぁっ…はぁっ…はっ…」
どんどん息苦しくなった。
「吸引器持ってきて。急いで！」
自分のことが、わからなくなった…。
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作者名：浅緋
| 作成日時：2021年7月21日 23時
