Episode：11 ページ12
事故から５日。
北斗の意識が戻りそうだと、病院から連絡があった。
連絡を受けて、病院に駆け付ける。
「意識が戻りそうなので、声をかけてあげてください。」
病院に着くなり、看護師さんから、そう告げられた。
「北斗…、北斗わかる？」
北斗はうっすらと目を開けて、自分がどこにいるのか、確認しているみたいだった。
人工呼吸器の外れた北斗は、首のギプスはそのままだったけど、いくらかすっきりしていた。
北斗も事故に遭ったことを覚えていないのか、
“お父さんとお母さんは…？”って聞いた。
「あぁ、大丈夫。今はちょっと会えないけどな。」
優吾は北斗を安心させるために嘘をついた。
何かに吸い込まれるように再び目を閉じた北斗。
このまま北斗が眠り続けてしまうのではないかと思った。
「まだ正常値とは言えませんね。数日以内に正常値に戻ると思います。呼吸は安定しているので、一旦は抜管しました。このまま様子を見ていきましょう。」
「ご家族の方はこちらに…。北斗君の今後についてお話しがあります。」
その主治医に別室に呼ばれる。
「樹、なにしてんだよ、行くぞ？」
動こうとしない樹に優吾が声を掛ける。
「いい。俺、ここにいる…。」
北斗から視線を逸らさずにそう答えた樹。
「優吾、行くよ。」
樹を残して、カンファレンスルームに向かった。
*
「まずは意識レベルが正常になったら、残存機能の検査をします。」
「残存機能って、なんですか？」
聞き慣れない言葉に優吾が質問を投げる。
「北斗君の身体の残っている機能を調べるんです。何ができて、何が出来ないかもその検査結果で判明します。」
「はぁ…。」
「前にも申し上げましたが、神経は一度損傷すると元には戻りません。ですが、多少の個人差は出るもので、北斗君の場合は、人工呼吸器も早い段階で離脱出来ましたけど、ずっと使い続ける人もいます。」
「最終的に北斗どうなるんですか？また歩けるようになるんですか？」
優吾の素朴な疑問。
でも、もう北斗は…
「残念ながら、歩けるようにはなりません。一生車椅子が必要となります。」
「アイツまだ中３だよ？志望校受かって、４月からは高校生なのに…。一生歩けないなんて、そんなのありかよ！？」
「優吾！」
優吾の気持ちも痛いほど、よくわかる…。
でも、“そういうもの”なんだよ…頸髄損傷って。
とにかく今は、北斗の残存機能が１つでも多いことを祈るしかない…。
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作者名：浅緋
| 作成日時：2021年7月21日 23時
