【名探偵コナン】それ、疲れません？3【降谷零】

Case88 ページ7

降谷side


(結局、休みをもらってしまった…)


休憩の間に様子を見に行くはずだったのだが、

梓さんの強い押しで看病するよう言われてしまった。



(……まぁ、今日は登庁する用事も、組織の仕事も入ってないし……)



六条Aのために時間を費やせるといえば、費やせる。



(ひとまず、食材を……)



独り暮らしをしている彼女が食事を作れるか、といえば難しいだろう。

特に嫌いなものもないと言っていたし、

卵粥でも作って、様子を見ようか。



食材を一通り買い、通いなれてしまっている彼女のマンションに足を踏み入れた。

さすがにピッキングするのも倫理的にどうかと思い、申し訳ながらもインターホンを押した。









返事がない。

物音もしない。


寝ている？

十分にありえる。

それとも倒れている？



どちらにせよ、心配なことに変わりはない。



ダメ元でドアノブを引くと、

その扉は簡単に開けてしまった。


嘘だろオイ。

さんざん気を付けろとあれほど……！！


ふつふつと沸き上がる怒りを感じながら、ゆっくりとその扉を開けて、

がらにもなく、叫びそうになった。



玄関に倒れる、

六条A。



「Aさん！？」



慌てて身を屈めて、彼女を抱き起こせば体は驚くほど熱い。

熱っぽい息を何度も吐き出し、時折咳き込んでいた。


ちらりと周りを見れば、

廊下に落ちている財布。

彼女の右手には診察券。



なるほど。



「Aさん、Aさん」



ペシペシ、と軽く頬を叩けば、少し身動ぎして、彼女はゆっくりと瞼をあげた。



『ふる……あ、……あむ…………？』

「降谷でいいよ、今は」



熱に浮かされる彼女は、潤んだ瞳でこちらを覗く。

そして、ゆっくりとその手を僕の頬に伸ばした。



『ふる、やさ、………ふるやさん……』

「ん？………寂しかったかい？」



彼女の熱い手をとれば、彼女は何度も頷く。


なかなかレアな光景だ。

にやけそうになる口許を必死で押さえながら、なるべく優しく、彼女の頭を撫でた。



「ベッド、行こうか。ね？」



倦怠感があり、体に力が入らないはずのその身体は軽く、本当に食事を摂っているのか心配になる。

横抱きに抱え、部屋の奥へ行くまで、

彼女はずっと僕の服を掴んで離さない。



(よほど心細かったのか)



彼女の境遇を知っていれば、

この胸が苦しくなるのも必然的だと思いたい。

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