I won't cry anymore. (ページ7)

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それから彼に家まで送ってもらった

「じゃあ」

さっきの出来事は何もなかったかのように
呆気なく去って行こうとする彼を引き止め

『バイトお休みなんでしょ
　家上がっていけば？』

「本気で言ってんの？」

『冗談でそんなこと言わないから』

彼は少し考えるも私の後を追い部屋に入り

「Aちゃん」

私の名前を呼ぶと玄関先でいきなり抱き寄せられ
角度を変え何度も甘いキスが降り注いできた
この日私は彼の全てを受け入れ一線を超えた

それからと言うものの会えば行為をするだけの
曖昧な関係となりいつしか彼からの連絡の頻度も
かなり減って気付いた頃には彼のおもちゃのように
なっていた、でもそんな彼から離れられず次第に
彼の虜になっていた。

「Aちゃんお待たせ
　遅れちゃってごめんね」

思い出に耽ている時間が長く
彼が遅れていることに全く気付かなかった

『ううん、全然大丈夫だよ』

"ありがとう"とふわっと笑う彼を見て
心が満たされたのも束の間、彼の首筋に薄らと
赤い跡が付いているのを見つけた

「どうした？体調悪い？」

随分険しい顔をしていたのか
彼がとても心配そうな顔でこちらを見ていた
その跡がなんなのか私に聞く権利なんかなくて
知らない誰かに対して嫉妬心に駆られる

『ごめん、急に体調悪くなっちゃって
　悪いけど今日は帰るね』

見え透いた嘘をついてその場から離れようとすると
"送ってこうか？"と引き止められるも
振り返ることなく、その場から走り去った

電車に駆け込むと女の子達が彼の話をしていた

「昨日久々にたまたま樹に会って話聞いたんだけど
　元カノとより戻したらしいよ」

『えーまた？？
　でもこの前全然違う女と歩いてんの見たよ』

「いつも色んな女連れてんじゃん？
　女が居ないと生きていけないタイプだからね
　浮気癖なんて治らないしすぐ別れるしょ笑」

『間違いない笑
　まあ、私には関係ないからどーでもいいけどねー』

私の中の何かが音を立てて崩れ落ちた
元々彼の悪い噂は聞いていたものの噂に過ぎないと
過信しすぎていた。